フリマへ行こう！｜リアクション

フリマへ行こう！

●手に入れたものは・２
　修、綾花、あおい、ののこの四人は、フリマ終了と共に、流れに乗るようにして、境内を出て石段の下までたどり着いていた。
「あおい、帰りも自転車で送って行くよ」
　修が、あおいに声をかける。
「ありがとう。でも、ごめんね。帰りは、ののこちゃんたちと一緒に、バスで帰ることにしたの」
「そうか。なら、しかたがないな」
　うなずく修に、あおいは歩み寄った。
「これ、奈良のお土産のお礼よ」
　言って彼女が差し出したのは、鈴と磨いたトンボ玉のついたキーホルダーだった。
「気を遣わなくていいのに。……でも、うれしいな。ありがとう」
　修は笑って、それを受け取る。
「今日は楽しかったよ。またな」
「ええ、またね」
　うなずくあおいに軽く手を上げて返し、修は駐輪場へと向かった。
　自転車にまたがり、漕ぎ出しながら、ふとフリマでの出来事を思い返す。
　あおいと一緒の買い物は、楽しかった。普段使いのできる服や食器、可愛い雑貨を彼女と共に眺め、手にした。
「これなんて、どうかな」
　と伸ばしたカップに、あおいも同じように手を伸ばしていて、顔を見合わせて笑ってしまった。
「おそろいね」
　同じカップを買うことになって、そう言ってクスリと笑う彼女に、修は言ったものだ。「大切に使うよ」と。
（そう、大切に使うよ。カップも、このキーホルダーも）
　胸に呟き、修は力を込めてペダルを踏む。
　寮まで送ることができなかったのは残念だが、しかたがない。何より、友人思いなのも、彼女のいいところなのだから。

　一方、修と別れた三人は。
　近くのバス停で、バスを待っていた。
「これ、二人にもね」
　あおいが綾花とののこに差し出したのは、さっき修に渡したのと同じ、キーホルダーだ。
「綾花ちゃんには、つきあってくれたお礼。ののこちゃんには、フリマのこと教えてくれたお礼よ」
「ありがとうございます」
　礼を言って、綾花は受け取る。そして、自分も――と、バッグから紙袋に入った品を取り出した。
「こっちは、あおいちゃんに、こっちはののこさんに」
　言って、それぞれ手渡す。
「ありがとう！　開けてみていい？」
　尋ねたのは、ののこだ。
「はい、どうぞ。開けてみて下さい」
　うなずく綾花に、ののこはさっそく紙袋から中身を取り出す。出て来たのは、サンマさんのスマホスタンドだった。『ラッコ』で売っていたものだ。
「わあ！　これ、ほしかったの！　綾花ちゃん、ありがとう！」
　ののこは、目を輝かせて声を上げる。
「あおいちゃんも、開けてみて下さい」
　綾花に言われて、あおいも袋の中身を取り出した。こちらは、ラッコのマグネットだ。
「ありがとう。これ、どうしようか悩んでて、結局買えなかったのよ」
　あおいも、目を見張って声を上げる。
「喜んでもらえて、うれしいです」
　綾花は、少しホッとしてうなずいた。
　実は、二人が気になりつつも買わなかった品を、プレゼントしようと買っておいたのだった。それでも、喜んでもらえるかどうか、少しだけ心配だったのだ。
「ところで、綾花ちゃんは、あの食器の店では何を買ったの？」
「スプーンとフォークのセットを、買いました。ポットも素敵でしたけど……持ち帰るのが大変そうで」
「そうよね。陶器だし、割ったりしたら……」
　言いかけるあおいの前に、ののこがジャーンと擬音つきで取り出したのは、そのポットだった。
「ののこちゃん、それ買ったの？」
「すごいです。……大丈夫ですか？　ちゃんと持ち帰れます？」
　驚くあおいと、心配げな綾花に、ののこは平気な顔だ。
「大丈夫。そーっと運ぶわ」
　うなずく彼女に、綾花はあおいと、思わず顔を見合わせるのだった。　

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