リモコン奪還作戦｜リアクション

リモコン奪還作戦

「あっ……」
　時子は自分が嫌われたのかと思ったが、そうではなかった。鷹はリモコンを物色しようとした柳司にまっすぐ向かっていき、その手にくちばしで一撃を与えた。
「いって！　なんや！？」
　柳司は一度巣から離れたが、鷹は容赦なく追撃する。つつかれた場所は肌が赤くなり、じんじんと痛む。
「どうやら、リモコンを取ろうとすると怒るみたいだな。なぜリモコンを守っているんだ……？」
「いててててて！！！！」
「あの方、大丈夫でしょうか……？」
　冷静に分析する修と、柳司を心配する時子。
　柳司が痛みに耐えつつなんとか空中でバランスを取ろうとしていると、崖の上から何者かが大きな声を上げた。
「みんなー！　あの鳥人間が鷹に悪さをしていた張本人なんだー！　みんなでやっつけろー！」
「はぁ！？　なに言うとんねん！」
　明らかな棒読みだったが、純粋に鷹を心配していた天吏はすっかり信じこんでしまったようだった。はっと目を見開くと柳司を見据えたまま足元の石を手にとった。
「鷹さんに悪さをするなんて……」
「て、天吏さん……？」
　異変を察知した時子が天吏をなだめようとしたが、その暇もなく天吏は石を投げつけた。
「あっぶねっ！」
　石は柳司の鼻先をかすめ、遠くの木に当たって落ちた。
「天吏さん、落ち着いてください……！」
「浅沼とは友人だが、そんなことをする奴じゃない。それに、さっきの声も聞き覚えあるしな」
　修と時子の説得で天吏はなんとか落ち着いたようだったが、鷹は相変わらず柳司を追い掛け回していた。隙を見て柳司がリモコンを狙うため、さらに鷹の攻撃が激しくなる。
　その一方でタルトは、鷹の注意が柳司に向いているのを見ると、持っていた水筒の口を開けた。
「今がチャンス！　崖を登ってリモコンを取ってくるよ！」
「あ、響！　ちょっと待った！」
　修は意気込むタルトを呼び止め、買い物袋の中からシーツや網、空気を入れるクッションのセットなどを取り出した。
「これは？」
「もしリモコンが崖から落ちたりしても大丈夫なように、リモコンと一緒に買ってきたんだよ。皆、準備するから手伝ってくれ」
　気の利いた修に、猫になったタルトはわぁっと顔をほころばせた。が、すぐに何とも言えない、心配するような表情になった。
「すごいけど、八神くん。これ全部でいくらしたの？　いくら百均とはいえ、お金あるなあ……」
「？　大した金額じゃないだろ」
　修がさも当然といった顔で返した。お金を持っているというのは、こういう些細な感覚にも如実に出てくるらしい。
　なんやかんやでクッションを膨らませて巣の下あたりに置くと、いよいよもってタルトが水筒の中の水を頭からかぶった。タルトの体がどんどん小さくなっていき、服ごと猫の姿に変身した。
　流石は猫と言わんばかりにするすると崖を捉え、上へと登っていく。崖はもろくなっているものの、巣まで辿り着くのに大して時間はかからなかった。

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