リモコン奪還作戦｜リアクション

リモコン奪還作戦

「なんだか下の方が騒がしいなぁ、どうしたんだろ？」
　ものづくりの材料を探しに山に入っていた曖浜瑠樹は、修たちの声を聞いて崖下を覗きこんだ。
　瑠樹の覗きこんだちょうど真下には鷹の巣があり、大量のリモコンも見える。下の四人も巣を見上げていたし、どうやらこのリモコンを取り戻すために何かしているらしいということは瑠樹にも理解できた。
「ん？　おうボクゥー、お前もリモコン取られたんか？」
「ちっちゃい子が一人で山はあぶないよぃ、茶髪でガラの悪い関西弁の不良に絡まれるかもしれないからねぇ」
「誰のこと言うとんじゃ骨削コラァ！」
　瑠樹に話しかけたのは、遠回りして崖の上まで登ってきた柳司と瓢だった。
「ううん、オレは山で何か拾えないかなぁーって。あんたたちはぁ？」
「あんた……あんなー、俺には浅沼柳司って名前があるんやでー？」
　柳司が眉をぴくりと動かしながらも笑顔で言うと、瑠樹もふわっとした笑顔を見せた。
「そっかぁ、オレは瑠樹！　浅沼君はリモコンとられたのぉ？」
「俺やなくて知り合いのやけどな、今どうやって取り返すか考えとるんよ。お前は宿題でもやっとるんか？　えらいえらい」
　瓢は二人の会話を遠巻きに見ていたが、ふと崖下をのぞき込むと、ちょいちょいと柳司に手招きをした。
「浅沼はん、鷹が動いたよぃ」
「ホンマに？　今行くわ！」
　柳司が見ると、確かに鷹は巣から離れて地上へと降りていた。
　地上には使ってないリモコンやら木の板、竹炭、プラスチック容器やらボイスレコーダーやら、とにかくリモコンっぽいものがばらまかれていた。「わざと無造作に置いたほうが警戒されないかも」という考えからだったが、はたから見ればゴミの山にしか見えない。
　ただ本人たちはそんなことは気にしていないようで、少し離れてリモコンをつつく鷹を見た修がぐっと小さくガッツポーズをした。
「よし、上手く行ったぞ……」
「御巫、さん。よろしくね」
「はい……頑張ってみます」
　天吏に言われて時子はそーっと鷹に近づき、手を組んで強く会話したいと願った。
　しかし、そんな事情を上の三人は知る由もない。
「浅沼はん、今がチャンスだよぃ」
「せやな！　いくで！」
　柳司は着ていたシャツを脱ぎ、口笛を吹く。たちまち足首から先が鳥の足に変形し、肩甲骨辺りからは大きな翼が生えた。その光景を見て、瑠樹が嘆息を漏らす。
「わぁー、すごいなぁ」
「せやろ？　さっさとリモコン取って帰るで！」
　軽く助走をし、崖から飛び降りる。普通の人間であれば大怪我間違いなしの危険行為だったが、柳司の体は風に乗って、まさしく鳥といった華やかさで宙を舞った。
「よぉし、じゃあオレは……」
　瑠樹もリモコンの奪還に興味を持ったのか、木に絡まっている蔦などを剥がし取ってそれを編み始めた。どうやら崖を下りるための縄を作っているようだったが、なにせ小学生なので力も弱く、なかなか作業が捗らないようだった。
　そんな瑠樹を尻目に、柳司が鷹の巣に近づく。柳司が巣のある岩に手をかけたその瞬間、時子を見ていた鷹が飛び立った。

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