リモコン奪還作戦｜リアクション

リモコン奪還作戦

　二人が崖の上の方まで移動している間に、崖の下ではさらにリモコンを取られた数人が集まっていた。
「うー、あんな高いとこに……しかもなんかこっち見てるよ」
　崖の下から巣を見上げる響タルト。隣にいた八神修もそれに頷いた。
「そもそも、なんでリモコンを集めてるんだろうな？」
「触感とか、形とか？　本人に聞けたりすればいいんだけどねー」
　ひとまず作戦を練らなければ。鷹は警戒しつつもリモコンの上に陣取ったまま、巣から動く様子はない。
　タルトのろっこん「チェシャ猫」なら崖を登って巣までたどり着けるだろうが、不安定な足場にいる状態で空を飛べる鷹に襲われたらひとたまりもない。
「どうする？　小石でも投げてみる？」
「それは……」と修が言いかけた所に、別の声が差し込まれた。
「だ、だめです……！」
「んお？」
　修の言葉を遮った声にタルトが振り返ると、そこには御巫時子の姿があった。
「す、すみません……。鷹さんがリモコンを集めてるって聞いて、私なら鳥さんとお話できるので、なんとかできるかも……と思いまして」
「それはいいな、早速お願いできるか？」
「もう少し近くに来てくれれば、お話できるんですけど……あそこはちょっと遠いです」
　時子が申し訳無さそうに頭を下げる。
　時子のろっこん「鳥の囀り」は強く願うことで鳥と会話出来る能力だが、もう少し近づいてくれるとやりやすいとのことだった。
「つまり、あの子をこっちまでおびき寄せればいいんだね！」
「ということは、これが役立つな」
　修が鞄から大量のリモコンを取り出す。大小さまざまなリモコンはどれも真新しく、ほんのりと新品特有の匂いがした。
「八神くん、これどうしたの？」
　タルトの質問に、修はどこか誇らしげな表情で答えた。
「ここに来る前に買ってきたんだよ。これを置いておけばあいつが寄ってくるかもしれない。持って行かれたやつとは形が違うけどな」
「あ、じゃあ私も……」
　時子が鞄の中をごそごそとあさっていると、ちょうど三人のところへ天吏がやって来た。若干息が荒くなっていたものの、天吏の表情は相変わらず何を考えているのかよくわからない。
「ふぅ、思っていたより時間がかかったわ」
「あ、天吏さん……」
　次々と増える人にタルトが少し戸惑う。一体何人が鷹にリモコンを取られたんだろう。

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