ろっこん・トラブル・シューティング｜リアクション

ろっこん・トラブル・シューティング

【寝子島シーサイドタウン】

「うちのケバブはメッチャ美味しいよ！」

　ドネルケバブをワゴンで売るトルコ人、バルシュ・コルテュルクの威勢のいい声が飛ぶ。
「さ、お兄ちゃんはお肉たっぷり！　お姉ちゃんには野菜多めにしとくよ！」
　夏休み真っ盛りともあり人通りが多く、ワゴンの前には列ができていく。
「すぐに作るからね、日陰のほうに並んでいってな！」
　この陽気なケバブ移動販売屋は寝子島のブームになりつつあった。

　ケバブを作る傍らに置いてあるラジオでは「n.k.FM」が寝子島の出来事を伝えている。

『一昨日より行方不明となっている６０歳男性の行方はいまだにつかめていません。九夜山へ行ってくると家族に残しており、救助隊を派遣していますが、現在九夜山では不可解な現象がいくつも起きていることもあり捜索は難航……』

　もう片方の耳では、ケバブを待つお客の会話が届いてくる。

「最近ナンパを装った誘拐事件が起きたらしいよー」
「まじ？　怖いなー」

　この空のようにいつも晴れ晴れとしている寝子島が気に入っているバルシュだったが、どうも最近トラブルが絶えないらしい。不安な気持ちをケバブを食べて少しでも安心してくれたら。そういう思いで今日も暑さにめげず、肉をローストする。
「はいおまちどーさん！」
「わーおいしそう！」
（お客の笑顔。これに勝るごちそうはないな）
　日が高くなり暑さが増せば、もう一つの看板メニュー、トルコアイスのドンドルマも売れ始めることだろう。
（俺は俺のやり方で、寝子島のみんなを元気にするぜ！）
「ドネルケバブ３つください〜」
「はいよ！」

　寝子島のトラブルな一日が始まろうとしていた。

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