夏のお泊り会｜リアクション

夏のお泊り会

☆おばけやしきにチャレンジ！

「お化けやしきと、お店……どっちに行こうかなぁ」
　ちょっとねむいけど、まだまだ元気！　な瑠樹は迷います。
「おっ……お化けやしきです？　つきこはおばけがきらいなので、３年生までは行かなかったのです」
　隣乃着子はちょっと不安そうです。
「オニごっこの後はオバケヤシキだな。みんなは怖いものだって言うけど、ボクは楽しみにしてたんだ」
　エルカディア・シュルツは嬉しそうです。
「本の中で見た日本のオバケに会えるかもしれないからね！　そんなにこわいものかな？　こわかったらボクの後ろにかくれてるといいよ」
　模擬店に行くつもりだった由貴ですが、つい負けず嫌いな性格が出ました。
「こ、こわくなんかないさ。全部作りモンだから大丈夫だ。逆にわらえるぜ！」
「そうですか、それならつきこも初ちょうせんなのです」
「がんばってきてね。オレはお店に行ってみようかねぇ」
　瑠樹はのんびりと言って体育館のほうへ向かいます。
「じゃあ、ボクたち三人でオバケヤシキ行こうか」
　エルカディアが言い、
「三人なら安心ですね」
「え、そ、そうか、わ、わかった」
　由貴は意地をはって、お化けやしきに参加することになってしまいました。

　入口から、おどろおどろしい音楽が流れてきます。
『いらっしゃいませ』の文字が書かれた唐傘おばけの看板が迎えてくれました。
「ふあっ、暗いのです」
　入口ののれんをくぐった着子が声を上げました。
　教室の中に机とダンボールで通路が作られ、２人並んでは通れない狭さです。
　ダンボールには黒い布がかけられ、窓も塞がれていて光が入りません。
「つきこは寝る時も小さな電気を点けるから、真っ暗なのは苦手なのですよ」
　怖いのは由貴も一緒です。
「な、なんか今ぶつかった？」
　幽霊とかお化け屋敷系はすごく苦手なため、びくびくしまくりですが。
（人前で騒ぐなんて男として駄目だよな）
　と思い、我慢しています。
「人形みたいだね。暗くてはっきり見えないのがザンネンだけど、いろんなオバケをこの目で……」
　エルカディアが言いかけたとき、突然オレンジの光と共に、ぬっ、と金色に光る仮面が現れました！
「うわぁ！」
　由貴は思わず叫んで、相手のかぶっていた黒い布を掴んでしまいました。
「うわっ」
　相手も驚いたようで、慌ててずりおちそうになった布を引っ張ります。
「大丈夫、お化けが出ても作りモノなのです。きっと大丈夫……きっと……」
　悲鳴を飲み込んで着子も精いっぱい言うものの。
　反対側から、ふわりと白布をかぶったお化けが出現しました！
「やっ、やっぱり怖いのです～～」
　狭い通路を全力ダッシュして、着子は逃げ出しました。
「お、おい待てよおいていくな」
　追いかけようとする由貴ですが、膝ががくがく震えてうまく走れません。
「ああ、待ってよツキコ、あぶないよ。ユウキはだいじょうぶ？」
　冷静に言うエルカディア。
「な、なんでもない。お、俺は怖くなんてないからな!」
　声を震わせながら、意地をはって頑張る由貴。
「いろんなオバケをこの目で見てると思うと感動しちゃうよ」
　エルカディアは終始楽しそうでした。

「ふあぁっ！」
（あのお化け、まだ追いかけて来るのですよ。まるで、ようじょに迫る変質者なのですっ！）
　それは誤解で、中のオバケ役は別な上級生だったのですが、着子にはわかりません。
（これがうわさの、『中の人はただのへんたい』ってやつです？）
「えーい悪い子は、くっつくのですーー」
　着子は、手近に置いてあった血まみれ（朱色のインクですが）の人形を投げつけました。
「うわっ、なんだこれ。取れねえ！」
　着子のろっこん『ぺと・ぺと』が発動しました。
　手に持っている物に、強力な粘着性を与えるという能力です。
　パニックになっているお化け役を尻目に、着子は無事脱出を果たしたのでした。