夏のお泊り会｜リアクション

夏のお泊り会

☆イベント準備とカレーの時間

　一方体育館や教室では、５，６年生がイベントの準備をしていました。
「ふぁ……」
　５年生の新井つくねがあくびをしました。
　決して真面目にやっていないわけではないのです。お泊り会が楽しみなので、みんなのために準備をがんばっています。
　が、つくねはいつも眠いのです。きちんと大人のいう事を聞く偉い子ですが、すぐ眠くなって欠伸をしてしまいます。
「つくねは、お化けの事はわからないからお店の準備を頑張るのです。お魚の絵を貼ったり、折り紙で作ったかざりをつけたりするのです」
　ぺたぺた。友達と協力しながら、看板に可愛い飾りをつけていきます。
　つくねの家は、旧市街の魚屋「魚新」です。お店のお手伝いをしているので、少し手慣れた感じで模擬店の準備をせっせと頑張っています。
　カレーのいいにおいが流れてきたり、下級生の遊んでる声が聞こえてきます。普通ならわくわくするところなのでしょうが。
「ふぁ、少し眠くなってきたのです」
　でも手を止めずに、無事飾りつけを完成させることができました。
「さて、たべものをあつかう時はきちんと手を洗ってからなのです」
　お絵かきせんべいやざらめをセッティングしていきます。
　
　ピーッ！
　笛の合図と共に、鬼ごっこが終了しました。
　辺りにはカレーのいいにおいが漂い、走り回っておなかはぺこぺこです。
「あ、ごはんですね……」
　どうやら準備ができ、つくねもカレーを食べに向かいました。　

「大盛りでお願いするっす！」
　カレーのにおいを思い切り吸い込みながら、剣崎一心はカレー係の人に言いました。
（いっぱい動いたあとはいっぱい食べろと、父ちゃんからも言われてるっすからね！）
　待ちきれないように急いで４年生が集まる場所に戻って、さっそく食べ始めます。
「……やっぱりいっぱい動いたあとに食べるご飯はおいしいっす！　カレーだからもっとおいしく感じるっす！」
「本当、おいしいですよね！　うちでお祖父様お祖母様と食べるカレーもおいしいけど、何が違うんでしょう」
　暁桜逢莉のスプーンもどんどん進みます。
「これならいくらでも食べられる気がするっすよ！」
　なんとなく会話っぽくなっているのですが、一心はカレーに夢中で女の子と話しているという意識はありません。
　甘口のカレーをあっという間に食べきると、一心と逢莉はおかわりをもらいに駆けていくのでした。

「いっぱい走ったからお腹ぺこぺこ」
　夢月姫も美味しいカレーを楽しんでいました。
「おかわりいいですか？」
「おかわり大盛りっす！」
　姫と一心、空っぽのお皿をカレー係の人に差しだすタイミングが、二人同時でした。
「「あっ……」」
　二人の目が合いました。
　女の子とまともに会話できない一心の頬がみるみる赤くなります。
　姫は一心に向かって、にっこり笑いかけました。
「みんな一緒だといつもより美味しく感じる気がしますよね」
「……あ、うん」
　いつのまにか、おかわりが皿に盛られていました。
　皆おかわりを受け取ると、それぞれの場所に帰って食べ始めます。

　カレーがなくなり片づけをすますと、いよいよ夜のイベントが始まります。