夏のお泊り会｜リアクション

夏のお泊り会

「全力で捕まえに行くっすよ～！」
　鬼になった一心は、４年生の双葉由貴を追いかけます。
　内心すごくお泊まり会を楽しみにしていた由貴は、負けず嫌いだけど運動神経はありません。
「捕まえたっす！」
「俺が鬼かあ……つかまえられるかな？」

「ちいきのバスケクラブでレギュラーをねらうつきこに、すきはないのですよ」
　素早さには自信がある着子。
　右に行くと見せ掛けて左フェイントで、由貴をするするっとスルーします。
　近くにいた二宮風太も、素早く校長から逃げていきます。
「おおっ？！　風太は中々すばやいのです。大きくなったら、バスケを一緒にやるです？」
「えっ？　ぼくはサッカーがいいな」　
　そう答えて走っていく風太でした。
「ざんねん。校長先生は無理をすると、近所の漁師さんみたいに、腰がグキッてなるのですよー」
「はは……気をつけるよ」
　校長先生が苦笑いしました。
　その隙に、逃げ遅れていた子の手を引っ張って姫が走り出しました。
「一緒ににげましょう。だいじょうぶ、しっかり鍛えてるから自信あります」
　由貴がすぐ近くまで迫ってきましたが、姫は空を指さして一言。
「あっ、猫が飛んでる」
「えっ？」
　そんなばかな、と思いつつ釣られて上を見てしまった由貴。
　その隙を突いて二人は逃げ出しました。
「やられた……」
　次に見つけたのは曖浜瑠樹。
「こう見えても、体動かすのには自信があるからねぇ……そうホイホイとは捕まらないよぉ！」
　瑠樹が身軽に駆けまわります。
「なかなかつかまらないな……」
　由貴はいいことを思いつきました。
「そうだ、逢莉、協力しようぜ！」
　ちょうど近くに来た、学校でよく遊ぶ逢莉に声をかけました。
「いいですわよ」
（下級生の子には急ターンしすぎず、手加減して捕まえるくらいにします。でも、速い子でしたら……容赦しません！）
「わぁい、鬼さんこちらー！」
　逢莉のフェイントをかわした……ところに由貴が待ち構えていました。
「あーあ、つかまっちゃった」
　逢莉との連携で、由貴は無事瑠樹を追い詰めて捕まえることができました。
「鬼ごっこも頭を使わないとな」
　由貴は生意気そうな笑みを浮かべます。
　鬼になった瑠樹が数を数えはじめました。
「１０数えたら追いかけるよぉ。いーち、にーぃ……」
　数字は飛ばさず、速さも変えずに１０数えてから、のんびりと追いかけはじめます。
「まてーまてー！」

このページにイラストを設定する