夏のお泊り会｜リアクション

夏のお泊り会

☆おやすみなさい

　怪談も終わって、暗幕が開かれました。
「おやすみなさい。また明日」
　校長先生の挨拶と共に、照明は最小限に落とされました。
　もう我慢する必要がなくなって、つくねはすでに夢の中です。

「もしもし……うん、こっちはだいじょうぶよ。お母さんがいるでしょ、元気出して」
　姫は弟からかかってきた携帯をこっそり取りだして話していました。
「それじゃ、おやすみなさい」　

（お父さん、お母さん……ぼく、がんばれたかな）
　いつも親に抱かれて眠っていたことは、心細くてなかなか寝付けません。
「ぼくだけじゃないよね……」
「大丈夫か？」
　由貴が声をかけました。
　こくりと頷き、ことは言いました。
「お友達のところにいってみる」

「う……」
（おトイレに行きたいけど、夜のおトイレこわい……）
　ことが行ってみると、咲耶は泣きそうになってもじもじしていました。
「おトイレ行きたいの？」
　体育館のトイレは使用禁止で、暗い渡り廊下に出て校舎のトイレまで行かなくてはなりません。
「このままじゃまたおもらし……しちゃう」
　ことがどうしようかなと思っていると、姫が咲耶の様子に気づいてくれました。
「こわくてトイレ行けないのですか？　一緒に行ってあげますよ」
　咲耶は頷くと、手を繋いでもらいトイレに向かいました。
　しかし咲耶が向かったのは。
「え？　そっちは男子トイレですよ？」
　姫が目を丸くしました。
「あ、あの、こっちでいいの……」
　咲耶は男の娘だったのです。
「どうしましょう？　１人で行けますか？」
　弟の世話は慣れているとはいえ、男子トイレにはちょっと入りづらくて姫は困ってしまいました。
　そこへエルカディア・シュルツがやってきました。
「あれ、男の子なんだ？　大丈夫、ボクが連れてってあげるよ」　
「お願いします」　
　エルカディアはパパと二人暮らしで、パパは家を空けることが多いので一人の夜は慣れています。
（でも、パパやママとはなれて寂しい思いをしてる子も多いのかもしれないな）
　トイレを済ませて体育館に戻ると、手品用に持ち歩いているぬいぐるみを取り出し咲耶の頭を撫でました。
「もうこわくないよ」
「わあ……」
　咲耶は可愛いぬいぐるみに目を見開き。にぱーと無垢な笑みを浮かべました。
「ねえ、いっしょにねてくれる？」
「うん、いいよ」
　ぬいぐるみを動かし、エルカディアは答えます。
（今日のこの日が、ここにいる全員にとって楽しい思い出になって欲しいからね）
　咲耶の様子を見て安心した姫も、体育館でのお泊りにわくわくしながら、ぐっすり眠ったのでした。

（忘れなきゃ、忘れなきゃ）
　由貴は怪談を思い出して、怖くなって頭から布団を被って寝ようとしていましたがなかなか眠れません。
　布団から顔をだしてみれば、瑠樹は気持ちよさそうに寝息を立てています。
さっきまでぬいぐるみにくっついていた咲耶も眠りについたようです。
（オレも寝なきゃ）
　焦るほど、眠れなくなってしまいます。
　結局、皆から一時間くらい遅れて眠りにつきました。

「おはようございます。朝ですよ」
　翌朝、寝坊している子を起こす姫の姿がありました。
「うーん、あれ、もう朝か？」
　起こされた由貴が目をこすっています。
　一心はとっくに起きだして校庭で竹刀を振っていました。

　みんな、楽しいお泊まり会を過ごせたようです。
　たくさんの思い出とお友達、そしてちょっぴり大人になれたでしょうか。

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あとがき

担当マスター：茄子りんこ
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございました。
初めてのお泊まりにわくわくドキドキする小学生を書けて楽しかったです！
残念ながら参加できなかった方も、またの機会にぜひ！

今回必要以外のものを持ってきた方は使えなかった場合もあります。
マスコメの注意書きが足りなくてごめんなさい。
でもそれぞれの個性が出ていて良かったです。

お泊まり会をきっかけに交遊が広がれば幸いです。
それでは、また機会がありましたらお待ちしております。

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