夏のお泊り会｜リアクション

夏のお泊り会

☆お泊まり会、はじまるよ！

　お泊まり会の開会式、大勢のこどもたちが校庭に集まっていました。
　お泊まり会では学年ごとに色違いの名札をつけるので、同級生かどうか一目でわかります。
　役員さんの話を聞きながら、お泊まり会をずっと楽しみにしていた４年生の隣乃着子は胸を躍らせていました。
（お泊まり会ドキドキなのです。きっとお友達も楽しみにしてるのです。つきこは３年間で、友達１００人出来たはずなのです）
　前にも参加している着子がこのドキドキぶりです。
　同じく４年生のエルカディア・シュルツは、発明家の父親に連れられて世界中を転々としていたので、初めての参加です。
（いろんな学校に通ったけど学校に泊まるなんて、こんな行事は初めてだよ。ネコジマの友達ともっと仲良くなりたいな。下級生の子もいるし、年上としてお手本にならなきゃな）
　いつ寝子島を離れるか分からないので、数少ない思い出は良い物にしたい……口には出さないけれど、そんなふうに思っているエルカディアなのです。
（そういえば家以外でお泊りするのは初めてっすね～。なんだかいつもと違ってワクワクするっす！）
　その近くで、竹刀を背負ってやってきた４年生、超元気っ子の剣崎一心もそう思っていました。
　幼い頃から剣の道に目覚め、地元の剣道場で日夜鍛錬に励んでいる一心。当然のように竹刀を持ってきたのですが。
「あ、ちょっと待って、それは……」
　受付で呼び止められる結果となりました。　
　
　１年生の嬉野咲耶はとても不安そうでした。
　今日はいつも一緒の双子の姉も来られないし、ママもお仕事で来られません。
　１人では超内気で臆病な咲耶は、きもだめしがあると聞いて青ざめていたのです。
（ボク……おばけとか……こわいし……知らない子たちいっぱいだし……）
「だいじょうぶですか？」
　ドキドキわくわく、お泊りを楽しみにしていた３年生の夢月姫です。
　普段から幼稚園に通う弟の面倒を見ているので小さい子の世話は慣れています。
　咲耶の不安気な様子に気付いて声をかけました。
　キュロットスカート姿が可愛らしい咲耶は、体をぶるっと震わせます。
「あ……お……おトイレぇえ！」
　咲耶は、起きているときは１時間４～５回程度トイレに行きたくなる頻尿体質なのです。
「え、だいじょうぶ？」　
　姫の言葉を聞く余裕もなく、咲耶は慌てて列を離れトイレへ駆けていくのでした。
「あれ、あっちは男子トイレですけど……急いでまちがえたのかしら」
　見送った姫は、おっとりと首をかしげました。

「よろしくお願いします。それじゃね」
　開会式も終わり、残っていた付き添いのお母さんたちも帰っていきます。
　心細そうに見送る子どももいます。
「ぁぁあああ私のマイエンジェル！　行ってしまうのねー……」
　そんな中大泣きしているのは。
　子供ではなく、松葉ことのお母さんでした。
「明日の朝までだから……」
　３年生の　ことは、ピンクのキャップに手をやりながら困っていました。
　ことは、口調は男の子っぽいですが照れ屋で控えめな普通の女の子。
　ファッションコーディネーターをしているお母さんの着せてくれる服で、普段から目立ちがちです。
　それだけでも恥ずかしいのに、お母さんのこの様子に真っ赤になっています。
（いつまでも内気なままじゃだめだよね……！　お泊り会でがんばって友達作ろ！　……できると……いいな……）
　お母さんを見送ったことは、ぎゅっと手を握りしめながらそう思うのでした。

「お母さんたちは帰っちゃったけど……皆がいるから、寂しくないよぉ」　
　ゆるっと笑顔を見せるのは、やはり３年生の曖浜瑠樹でした。
　今年の３月、親の都合で一家そろって寝子島に越してきた瑠樹は、初めてのお泊まり会にもマイペースでした。

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