夏のお泊り会｜リアクション

夏のお泊り会

☆鬼さんこちら！

　５、６年生が模擬店の準備をしている間、１～４年生は校庭で校長先生と鬼ごっこです。
　校庭の隅でカレー作りが行われている一角を除いて、校庭をめいっぱい使って白線が引かれています。
「ルールを説明します。白線の外へは出ないこと。校長先生にタッチされた人はタスキをかけて鬼になります。鬼はタッチするたびにどんどん増えていきます……」
「オニごっことはみんなで日本の怪物『オニ』の真似をするんだと思ってたけど追いかけっこなんだな。これはボクの生まれた国にもあった遊びだ、楽しいよな」
　日本の子たちも同じように遊んでたんだと思うと、なんだか嬉しいドイツ出身のエルカディアでした。
「ルールをしっかり聞いてしっかり備えるっす！」
　ルールを一生懸命聞きつつ、一心はふと竹刀のことを思い出しました。
（鬼ごっこの前に竹刀は隅っこに置いておくっす。背負ったままだと逃げにくいですし、他の子に当たったら大変っすからね！　……あっ）
　しかし背中に手をやってみて、気付きました。受付を通るときに竹刀を役員さんに預かられてしまったのです。
（明日は返してくれるって言うし、仕方ないっすね）
「こういう身体を使う遊びは普段から鍛えてる成果を見せる時でもあるっす！　だから頑張るっすよ～！」

「それでは、始めます」
　ピーッ！　笛の合図と共に鬼ごっこスタートです。
　雨宮花三郎校長は子どもが大好きな、やさしい先生です。
「さあ、追いかけるぞ～」
　大げさに表情を動かしながら、近づいたり取り逃がすふりをしたりオーバーアクションです。
「面白そうだねぇ……オレも混ぜて混ぜてー！」
　眠そうな目、のんびりした口調ですが、瑠樹の足は意外と早いのです。
　楽しみながら、他の子の邪魔とかはしないように気をつけて走って逃げます。

「集まってそうそう遊べるとはなかなか気前がいいのですね！」
　白いキャスケットが良く似合う元気いっぱいの４年生暁桜逢莉は、いつもと違う体験を全力で楽しむつもりです。
「鬼をやりたいです！！」
　そう言って、始まって早々校長先生にタッチしてもらい、鬼になりました。
「疾風迅雷のごときわたくしの速さをとくと見せつけてあげます！」
（でもわたくしは上級生ですから手加減もしませんと……難しいです。なので同級生のかただけには容赦しないことにします！）
　逢莉は近くにいた一心を追いかけました。
　しかしただ追いかけるのではなく、一心から逸れて斜めの方向へ向かいます。
「あれ、あきらめたっすか？」
　そう一心が思ったとき。
　きゅきゅっと急ブレーキしてからくるっとターンして。
（油断している方を捕まえましょう！　フェイントというものですね！）
「強襲にお気をつけあそばせ、ですっ！」
　脚力はもちろんですが、重要なのは切り返しの速さ！
「ぬうっ！　やられたっすよ」
　だまされやすい性格が災いしてタッチされてしまいました。
「油断大敵、女の子をなめてはいけません！」
　普段女の子との交流が皆無な一心は、赤くなって逢莉から離れていきました。

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