「ドキドキシマス。でも楽しみデスネ~」
そわそわと体を動かしながら、佐助は袖口から舞台を盗みみた。
今は司会者が始まりの挨拶をしているところだ。
(歌を披露スルツイデに信仰も広めたいデスネ! 歌のチカラで信者イッパイ目指しまショウ!)
「それではさっそく参りましょう。トップバッターはこの方! アレハンドロ・佐助さんです!」
名前を呼ばれ、まってましたとばかりに佐助は勢いよく飛び出した。
「Hola!私、生まれはバスク育ちはイロイロ、各国を旅して回るフーライボーでアリマス! その土地に溶ケ込ムには住人と一緒に楽シム事が一番デス! と、云うワケで参加シマシタ! 姓はアレハンドロ、名は佐助。人は私を神の僕と呼びマース!」
『オノコはつらいよ』でおなじみのトラさんポーズを決めると、会場からやんやと声が沸く。
「お、渋いですね」
と司会からつっこまれたので、
「ゴーにいらばゴーに従えデスネ!」
と得意げに返す。司会者はいまいち腑に落ちない顔をしているが、佐助はにこにこと笑ってごまかした。
日本語は難しく、未だに文法や文脈がちぐはぐであるが、本人はいたって気にしていない。
「ところで、アレハンドロさんは今回どんな曲を歌うんでしょう」
「Si! 曲名は『A ti de un lugar distante』日本語に直すナラ『遠い場所のあなたへ』といったカンジデスかね? キリスト教を広めるべく旅立った宣教師のデス」
「なるほど。それでは歌っていただきましょう。アレハンドロ・佐助さんで……」
司会者が言葉に詰まり、そっとマイクを寄こしてきた。佐助は意図を察っしてにこりと笑う。
「A ti de un lugar distante、デス」
佐助は大きく息を吸い込むと、口からマイクを遠ざけ、歌い始めた。
♪
Soy una montaña grande para ir a encontrarsete de lejano una
Distancia larga que caminó y un valle profundo.
Aunque se olvida del primer sentimiento a tu base que excede el todos,
Ya es bueno una porción importante simplemente permanece porque
La superficie se ha anulado que
Soy la lluvia frío para ir a tu base de lejano
Una distancia larga que camina y un viento para rociar.
El todos se llevan y es a tu base.