歌え！　笑え！　シング・ア・サンドー｜リアクション

歌え！　笑え！　シング・ア・サンドー

「はい、いらっしゃい！」
　振り向いたすばるは、不意打ちに吹き出してしまった。
　鼻メガネとかつらを身につけた二人組は互いにハイタッチをする。
「ちょっと！　それは卑怯だよ！」
「天丼は笑いにとってかかせないんだ」
「天丼オイシイですカラネ！」
　メガネとカツラをとると、ふたりはぴかぴか光る魚たちを選び始める。
　やっと静かになったな、とすばるが表をみていると、舞華が店先へと顔を出した。
「いらっしゃい！　ほんとに来てくれたんだ」
「あら、約束を破る女にみえました？」
　舞華の登場に佐助の鼻息が荒くなる。刀は慌てて舞華から佐助を遠ざけた。
「この時期ってなにがおすすめかしら」
「そうだなあ。あ、今日はいいカンパチが入ってるよ。ムニエルなんかにすると味が引き立つかな。あとは当店自慢の寝子島ちくわ！」
　ちくわ、という単語に首を傾げながら、舞華はそれをひとつづつ買った。
「まいどありー」
「じゃあ、あなたにこれ」
　レジ袋と交換で渡されたのは、アカウント名と書かれた小さいメモ用紙だ。
「今日撮って頂いた動画はその名前であげるので、是非見て下さいね（そして再生回数をあげてくださいね）」
　にっこりと礼をし、舞華はゆっくりとした足取りで去ってゆく。

「羨まシイ！　新井さんだけズルイヨ！」
「ちょっとは落ち着けよ、アレハンドロ。ところで、どうして新井ひとりで店番なんだ？　イベントはもう終わったろ」
　刀の質問に、すばるは苦い顔をした。
「聞かないでよ……。きっとどっかでいちゃいちゃしてるんだ。仲がいいのはボクも嬉しいんだけど、ちょっとは息子の身にもなってほしいな」
「た、大変だな……」
　すばるに心底同情する刀。その横で、佐助が「決まりマシタ！」と声をあげた。
「寝子島ちくわにシマス！」
「あんだけ魚みてたのにちくわか？　まあでも、ここのちくわは美味いよ。俺はかますをもらう」
「まいどありー。アレハンくんはちくわ初めて？　なら一本おまけしちゃうよ。刀っちは相変わらずお目が高いねえ」
　商品を包みながら鼻歌を歌うすばる。刀はそんな姿をみて心の中でひとりごちた。
（そういうとこ親父さんに似てるっていったら、怒るだろうなあ）

　一方、『うさぎ屋」では……。
「豚玉おいしい！」
「焼きそばもおすすめだ」
　リスのようにお好み焼きを頬張っている雅人は、まだ自分のアホ毛が動いていることに気づかない。
　修もその向かいで扱いなれたへらで器用にお好み焼きを切り分けて、ソースとマヨネーズ、青のりとかつぶしの作りだす四重奏を思う存分味わっていた。ブルーは店の裏で預かってもらい、魚新で買った魚をご褒美にあげている。
　綾花の野良猫は店に入る前、煮干しをあげてお別れしていた。
　カウンターでは、満月特製の特大お好み焼きを綾花が食べていた。
「さ、じゃんじゃん食べてくんさ！　お代わりはいつでも焼くからねえ！」
「ほんとに美味しいです！　ほっぺたが落ちそう」
「喜んでもらえたようでよかったんさ！」
「宇佐見、塩焼きそば一人前頼む。それで焼きそばの3分の1、綾辻にもやってくれよ。残りは俺と千鳥に」
「いいんですか？」
「ありがとう八神くん！」
「はあ、イケメン君は流石だねえ」
　満月に茶化され、修は赤面しつつ開き直る。
「俺は、うさぎ屋が美味いってことを宣伝したいだけだ」
　へらをかちかちと合わせ、満月は鉄板の前に仁王立ちになる。
「ふふ、ありがとさ！　さて、塩焼きそばいっちょ！」

　ステージ終了後、いたごとなぎさはゆっくりと商店街を回りながら帰路についていた。
「もう、魚屋の宣伝もしっかりしてよね」
「ごめんごめん、しようと思って忘れてたんだよ。なぎさのことで頭がいっぱいでさ」
「またそうやって……」
　しかしなぎさもまんざらではない。照れくさそうにしながら粗品の鼻メガネをいたごにかけると、ぴたりと隣によりそった。
（明日の夕ご飯は、いたごさんの好きな物作ってあげよう）
「メガネで前がみにくいよ、なぎさ」
「ちゃんと案内してあげますよ」
　満ち足りた気持ちで、なぎさは魚新までの道をたどる。
　次の日また、指輪を絡めた新たなサプライズが自分を待っているとはつゆ知らず。

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あとがき

担当マスター：貝
ファンレターはマスターページから！

カラオケは一緒に行く人によって選曲を変えます。
歌の趣味がディープすぎて好きな曲を堂々と歌えないやるせなさ。
そんな貝です、こんにちは。

裏方の方も、ステージ参加者の方も、審査員の方もお疲れさまでした。
それぞれに楽しんで頂けていたら幸いです。

さて、ステージ曲についてですが、少しお断りしておくことがあります。

・GMは所詮貝ですので、外国語がからきしです。翻訳は『文明の利器』にほぼお任せしたので、精通している方々、「おかしいぞ？」と思う場所がありましてもどうかご勘弁ください。

・イントロ～1番まで、の曲の長さに満たない歌詞の方がいらっしゃいましたので、こちらでつけ足した部分があります。ご了承ください。（アクションの長さのままリアクションを書くことも考えたのですが、できるだけ公平にステージに立ってほしいと思った次第です。）

　　　　
また、参道商店街、旧市街の方々のバックアップアクションは本当に心強かったです。
文章に書き起こす上で、こちらがいろいろ助けられたリアクションとなりました。ありがとうございました！

では機会がありましたら、またどこかで。

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