みんなで「闇鍋」！―食とは何か？―｜リアクション

みんなで「闇鍋」！―食とは何か？―

■闇鍋開始

　冷房の聞いたリビングはかなり広く、中央に大きなテーブルが設えてあった。
　みな思い思いに座る。
「では、みんな持ち寄った具材を鍋に入れてくれ」
　博士の合図で次々に具材が投下された。
「みゆきちゃんと月詠ちゃんは何入れたのだ？」
　真央が尋ねた。
「えっと、私はね――」
「秘密だ」
「そ、そう！　秘密！」
　思わず口を滑らせそうになったみゆきは、月詠のクールな声にすんでの所で言い直した。
「そうかー」
　と、言いながら真央が取り出したのは、MSサイズ卵1パック（10個入り）であった。
「待」
　て、という月詠の声は届かず、その場で一気に10個の卵を割り、掻き混ぜてから一挙に鍋に投入、という暴挙に出る真央。
「これが塩だろうが醤油だろうが味噌だろうが二色火鍋だろうが酸辣湯だろうがチョコだろうが、卵ならどれとも相性バッチリ？　なのだ、大らかな愛？　で包んで美味しく召し上がるのだ～！」
　やってやったぜ！　的な会心の笑みを浮かべる真央。
「マイブームなバケツプリンとか大根餅とか考えなくもなかったのだ。しかしヤツラは溶けるのだ……」
　実は、大根1本丸ごとすりおろしてぶち込むミゾレなども考えていたが、かき玉に軍配が上がったらしい。
「美味しくなぁれ、美味しくなぁれ、愛をドバドバ注入なのだ～」
　上機嫌でお玉をかき回す真央。
　それに便乗したのは、古き良き時代の不良を体現する鬼河内巌だった。
「わいのソウルフード、カレーを投入じゃあ！」
　と、固形ルーを投げ入れる。
　激辛では無く、中辛なのは番長の優しさだったりする。
　暑くて食欲が落ちる夏こそカレーという訳らしい。
「巌ちゃんには季節とか関係ないんじゃないのだ？」
　過去に猫をカレーの具にされたことがある（しかも2回も）真央がツッコミを入れる。
「うわ」
「すごいことになってますぅ……」
「元のスープはすでに跡形もないな」
　順に、鳴、みゆき、修のコメントである。
　鍋はすっかりカレーかき玉汁になっていた。
「そこの2人、正座」
　ノリノリの真央と巌を制したのは、月詠の平坦な声だった。
「闇鍋にもルールがあるんだぞ」
　食べられないものは禁止。
　タブーとして、
　・液体
　・熱で溶ける物（飴やチョコ等）
　・生煮えでも問題はないもの
　・生きてる物
　・毒物（主にキノコ）
　がある。
「他にも、持ってきた者は正座して謝罪」
　彼女が語ったのも、数ある闇鍋のローカルルールの内の1つであったのだが、多くの場合に採用されるものである。
「ごめんなのだー」
「すまんかったのう」
「まあまあ」
　少しばかりしょげた2人を励ましたのは、刀だった。
　この季節だと汗も沢山かくから、とタオルも用意してきた刀と、
「胃薬も口濯ぎ用の水も、こんなこともあろうかと用意してある。皆、心置きなく倒れてくれていぞ」
　と爽やかな笑みを浮かべる修の2人は、意外と女子力（？）が高いかもしれない。
「ふむ……。しかし、これでは2人分足さねばならんな。冷蔵庫から適当に取ってくるか」
　と、博士は奥の部屋から何かを持ってきて、鍋に投下した。
　ことことと音を立てる鍋を見つめる一同。
　沸騰してひと通り火が通ったかな、と思ったところで、刀が蓋を開けた。
（こっ、これは……）
　カオスの出来上がりである。

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