全員強制緊縛Day｜リアクション

全員強制緊縛Day

◯
　目を開けると、圭花の顔が飛び込んでくる。
　どうしよう。
　どきどきしてるのバレる、いや。もうとっくにバレているだろう。
　どうしようもなく恥ずかしかった。年下の、圭花の方がずっと、ずっと落ち着いているじゃないか。
　けれど圭花が『落ち着いている』ということは、繋がっているからわかるのだ。
　だから市子も無理に離れようとしないで、圭花に、身体の熱に身を委ねた。
　それはとても幸福なことだった。
　いつまでもこうしていられればいいのにとも思うほどに……。
「そしたらいつも隣、居っから、なんだってしてやれっし」
　いつも隣にいたら、圭花にお返しができるだろうか。
（あれからコイツは優しくしてくれてばかり……）
　本来なら、市子が優しくして、甘やかしてあげないのに、圭花はそんな隙を見せない。
（……ワガママ言って困らしてくれるぐらいでいーのに）
　出来過ぎだ、この野郎。
　思わず、そんな悪態をつきたくなる。
　けれどそんな駄々でさえ、圭花は受け止め包み込もうとするのであろう。
（あたしにできる事は……）
「なぁ圭花、あたしにして欲しいコトとかないのか……？」
「して欲しいこと……？」
「……ああ」
　圭花は市子から目をそらさずに、一拍の間を置いてから話し始める。
「それってどんなことでもいいの？」
　市子は息を呑んだ。
　そして理解する。
　この出来過ぎた少女は、市子が思っていたよりも、もっとずっと貪欲で、激しいのだと。

　度々言葉を失う市子を、圭花は急かさなかった。
　胸の中はずっと急いていたけれど、それでも、ただ黙って言葉を待つ。
（こんなことを思うのって、私が単純で子供だからかもしれないけど……、
　叶うなら……毎日一緒にいて、毎日手をつないで、毎日キスしてほしい）
　圭花の願いは、至極単純だった。
（……ほんとは、悲しいくらい、切ないくらいそう思う）
　その想いは、単純とは言えなかったが。
　けれど圭花は言葉にはしなかった。
　それから長い長い沈黙が二人の間を流れた。
　その間にもゴンドラは上り、景色は変わっていく。
　そうして時間ばかりが流れ、頂上も近くなった時、ようやく圭花は沈黙を破る。
「……もう一度、キスして」
　観覧車が頂上に来た時に口づけを交わすと、その恋人たちは永遠に結ばれる。
　そんな、ジンクスに縋るつもりはなかった。
　けれどもし、万が一にでも叶えてくれるのであれば、すがってみてもいい。
「……わかった」
　市子は小さく頷いた。
　そして、額をつけたままさらに二人の顔は近づいていき――市子と圭花は結ばれた。

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