【ネコミケ】萌えろ！２日目の幻想バトルロイヤル！｜リアクション

【ネコミケ】萌えろ！２日目の幻想バトルロイヤル！

<３>

　鈴野海斗は既に光線を浴び、別人のように振舞っていた。
　なりきり度合MAXだ。
　旧陸軍軍服に憲兵の腕章を付け、模造刀の軍刀と十四年式拳銃を携え、眼光鋭く彼は叫んだ。

「公序良俗甚だしく逸脱した者は神州日本国民と言えども逆賊である。逆賊である以上、我が剣を以てして天誅を下す！」
　泣く子も黙る鬼憲兵、カイト君が爆誕した瞬間である。
　元ネタは原作者がモテない暗く惨めな青春時代の鬱憤を晴らすため、『国家』や『民族』という概念を盾にして、不埒な若者たちを現代に蘇った憲兵が軍刀で斬り伏せ、銃殺し、戦車や零戦まで用いて焼き払うカルトな漫画だ。
　要は『リア充は全員死ね』という原作者の強いメッセージが篭められた作品で、読者から『そんな漫画を描いているからお前はモテないんだよ』とツッコミが入るまでが様式美なんだとか。
「朱雀、青龍、白虎、玄武？　ほう、攻撃を受けると服が脱げると？　となると最後にはどうなるのだろうか。いや、最後はもうそれどころではない気がする。……よって彼奴らも逆賊だ、公序良俗を乱し大和魂を汚す痴れ者どもだ、すべからく死ね！」
　カイト君は軍刀に手を掛けると、その煌く刀身を抜き払った。
「憲兵小尉、鈴野海斗、抜刀。これより粛清を行う！」
　カイト君は手近のコスプレイヤーの頭に唐竹割りをした後、そのまま次の非国民（カイト君視点）へと斬り掛っていった。

※この世界で万が一負傷しても、元の世界では復活できるのでご安心下さい。

　ろっこん『ハイドサイト』で透明化した霧谷朧は後悔の念の真っ只中だった。
「興味本位で来たことをすっげー後悔する事態になったし……」
　以前から興味があったネコミケ。
　今年は何故だか一般人も参加しやすいように敷居が低く設定されていたため、勇気を出して会場に飛び込んでみたのだが……。
「神魂事件に巻き込まれたとか、笑えないんよ、これ。とりあえずろっこん常時発動させて収まるの待つか……」
　透明化した霧谷が徘徊していると、あっちこっちで乱闘騒ぎが起きているのが分かった。
　同時に、四神獣もどきが暴れているのも確認できた。
「なるほど、あの四隅で暴れている奴らが元凶か。ひとまず透明のままで高みの見物と洒落こもうじゃん♪」
　彼は透明なまま、安全圏で騒動を観察しようとする。
　だが、あまりのカオスぶりと、収集のつかなさに一抹の不安を覚えた。
「でも、この様子だといつになったら収集つくのかなー？　早いトコおしまいにして、家に帰りたいんよ」
　思わず気持ちを吐露する霧谷。
　そして、彼は思わず、『おしまい』というろっこんの解除ワードを無意識に口ずさんでいることに、まだ気が付いていない。
　そこへ浴びせられる、黄色い魔法少女の光線の一撃！
「嘘だろ！？　あいつら、透明でも気配を感知できるもんなん！？」
　勘違いしたまま、霧谷はゲームキャラに変身してしまう。

「え？　なにこれ？　ゲームのキャラになってるー！？」
　霧谷は自分の体を触りまくって確認する。
「これ、スマホカードゲーム『マジッククエスト』（略してマジクエ）のキャラ、ミストちゃんじゃん。ってことは……」
　霧谷、もといミストは大事な部分を触診。
「女になってるー！？」
　ガビーンという効果音が聞こえてきそうなほどショックを受けていた。
　ミストは、マジクエでスペックが高い他に強気発言から甘えや弱音な台詞ギャップやケモ耳により人気が高い狐娘である。
　狐火で攻撃魔法が得意、時々尻尾を回して飛ぶという変な飛び方をする（二本尻尾の友達狐から教わったとかいう設定）、楽しい方の味方に付く、まじまじ見られるのが苦手で赤面、逃げる、などの設定がある。
「というわけでミストちゃん参上！　どんなイタズラしちゃおっかなー？　透明のままだからバレないよね、ニシシシ！」
　未だに透明化が解除されていることに気が付いていないミストによる『どきどきイタズラ大作戦』が決行されるのだった。
　残念な結果しか、予想出来ない。