故郷での夏休み｜リアクション

故郷での夏休み

●いつもより早く着いた帰省

　後木真央は、日間賀島から帰ってきた寝子電内で八神修を見かけたので駆け寄った。
「修ちゃん！　お帰りなのだ～！　へへ～、なんかちょっと会わなかっただけなのに、会えてうれしいのだ」
「ただいま、真央」
　真央に再会した修は、何故か安堵の表情に。
「何かあったのだ？」
「いや、なんでも。駅に着いたら、ｍｉａｏの喫茶店か物産展に行かないか？」
「うん、お茶したいのだ。修ちゃんの話も聞きたいのだ♪」
　駅に着くと、ふたりはｍｉａｏの喫茶店に行き、注文をしてから、それぞれの帰省話をすることに。
「それじゃあ、まずは真央ちゃんから話すのだ」
　水を一口飲んでから、実家に行くところからの話を始める。

　普段は鈍行乗換１０時間コースだが、バイト代でお財布ホカホカな真央は、新幹線で帰省した。
「全部鈍行だと実験にならないのだ。ゴンちゃんちでバイト代貰ったし、豪勢に新幹線も特急も使うのだっ！」
　いつもは早朝帰省だが、今回は少し遅めの出発。
　まずは新横浜から名古屋行きのぞみを使い、名古屋から内海へ。内海からバスで師崎港まで乗ると地元だ。
「早いのだ。普段の半分以下の時間でついちゃったのだ……」
　実家に歩きながら、とある屋敷で静養中の末期癌患者が元気になったら、実家に呼びたいと画策している。
（あの人が来るなら、師崎港からカーフェリーかなぁ……。車椅子移動がＯＫなら河和港だけど、最小限ならやっぱり師崎港なのだ）
　悩ましすなのだっ！　と頭を抱えるが、その時はその時なのだ！　と歩き出す。

「おじぃ！　おばぁ！　叔父貴っ！！ただいまなのだっ！」
　玄関を開け、元気よく挨拶をする。真央の声を聞き付けた祖父母と叔父は、玄関に来ると「おかえり」と出迎えてくれた。
　居間に入ると、祖母が冷たいお茶と冷菓が持ってきてくれた。
「ありがとうなのだ。暑かったから、ちょうどほしかったのだ」
　お茶と冷菓で一息ついたところで、祖父がさっそく成績表を見せろと言い出した。
（あんまり見せたくないのだ……）
　そぉ～と差し出した成績表を見た祖父は、出迎えてくれた時と打って変わって険しい表情に。
　その後、きつーい拳骨をくらい、涙目になる真央だった。
「痛いのだ……。次は頑張るのだ。今度は赤点減らすのだ～」
　痛む頭をさすりながら、そう約束する。理学療法士志望なので、勉強は頑張ってもらいたい。

　成績表を見せた後は、寝子島での出来事を話す。
「寝子高の夏合宿褌とサラシで遠泳参加してみたのだ。すっごく楽しかったのだ！今度こっちでも……」
　それはちょっと……という顔をする祖父母と叔父。
「ダメなのだ？」
　ダメでしょ、と３人の目がそう言っているので話題を変える。
「寝子島は電車あるから、うちの島とは大分感じ違うのだ。今度、ここに友達呼びたいのだ！　いいのだ？」
　真央の友達なら歓迎するから、友達が来れるようなら連れておいでと祖母が言ってくれたことが嬉しかった。

　翌朝。４時に起き、祖父母に畑連行。
「ふぁ～い、おばぁ、一緒に行くのだ～」
　まだ眠いので、あくびをしながら畑に実っている野菜を収穫する。
「みんな、今頃、何してるかなぁなのだ……」
　帰省したり、寝子島に残ったり、様々な過ごし方をしている友人のことが気になる。
　畑仕事を終え、朝食を済ませた後は夏休みの宿題を。
「春は曙、やうやう白くなりゆく……」
　早起きしたこともあり、暗唱中に眠気が。コックリコックリ舟をこいでいたら、祖父に活を入れられた。
「はっ……！　真央ちゃん、寝てたのだ？」
「しゃきっとせんかい！」

　帰省の話を聞いた修は、真央らしい過ごし方だったとクスリと笑った。
「楽しんだようだな、真央」
「そういう修ちゃんはどうなのだ？」
「俺？」
　話そうかどうか迷ったが、真央が話したらには自分も話さねばなるまい。
「俺の帰省は……」

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