仁義なきアウトレット・ウォーズ｜リアクション

仁義なきアウトレット・ウォーズ

　ペットショップコーナーは生体販売はもちろん、プレミアムフードやおやつの他、おもちゃや洋服のようなグッズ系に、ペットサロンも完備とかなり充実している。深雪と渚砂が飼っている白猫のサティにおしゃれをさせてあげようとそこへ足を踏み入れたものの、へたをすれば人間のファッショングッズよりも種類が多いのではないかと思えてしまう品揃えの豊富さにさすがの深雪もたじたじだ。

「サティは女の子だからなー、可愛い系？　あ、このふりふりのとかいいんじゃね？」
「うん、可愛いな。白猫だから色柄ものが似合いそうだよなあ」
「うにゃ～～」

　ん？
　今猫の声がした？

「こら、マーブル。……何だ、誰かと思えば」
「あ、シュウじゃん！」
「わー、修君こんにちは。マーブルも元気そうだなー」

　勝手に肩から降りてしまった仔猫のマーブルを抱き上げたのは八神修。深雪たちの姿を見つけ、目を細める。

「サティは息災か？」
「おう、元気元気。色々買いに来たんだー。洋服とかおもちゃとか！」

　深雪と渚砂が飼っている白猫のサティは、修から譲り受けたのだそうだ。偶然会うのはふたりの友人としても嬉しいが、先に里親としての心配が修には先に立ってしまうようで。

「ふむ、服か……猫には本来、あまり勧められないのだが」
「そうなんだ？　なんでー？」
「猫は顔だけじゃなく身体のいたるところに感覚器官としてのヒゲが生えていると言われていてな、それを服で使えなくされるとバランス感覚を失って運動能力に支障が出るんだ」
「へえー！」

　修によれば、顔以外のヒゲは触毛と呼ばれており、それの機能を服で遮られてしまうと、ひどい場合は満足に歩くことも出来なくなるらしい。

「スフィンクスのように防寒が必要な猫種なら、ケープのような防寒具もいいだろうが……」
「シュウ、すっげー！　タメになるなー」
「じゃあサティのおしゃれは首輪でだねえ」

　修から的確なアドバイスを受けた深雪と渚砂は、洋服コーナーの隣の首輪コーナーへ。黒い蝶ネクタイタイプは男装の麗人ぽくて可愛いとか、いやいやオーソドックスに女の子らしくピンクがいいとか、アンティークのちりめん布を使った一点ものの和風首輪がお高いけど絶対に似合う！　などなど、大盛り上がりだ。

「よし。俺たちも行こうか、マーブル」
「みゃっ！」

　深雪と渚砂にいっときの別れを告げ、修はマーブルと買い物へ。夏は猫たちも食欲が落ちるから、色々と新しいものを試して少しでも元気に食事を楽しんでほしいとあれこれプレミアムフードを眺めて回る。

「へえ、おやつも色々だな。マーブル、猫代表のご意見を伺おうか」

　フードに振りかけるタイプのほぐしたおやつを試食させてくれるコーナーの前で、マーブルは興味津々な様子で鼻をすんすんいわせてはぺろりと舌なめずり。中でもマーブルが特にお気に召したのは、無添加無着色のサーモンチップとささみフレークのようだ。

「わかったわかった、もっと食べたいんだな。帰ったら皆で夕食の時間だ」

　他には熱中症対策で水分を取りやすいようにとゼリー寄せタイプのウェットフードを何種類か見繕い、氷水を入れておける湯たんぽと冷却マットをそれぞれ選んで。

「お支払いはどうされますか？」
「ああ、カードで。一括だ」

　すちゃっとゴールドのクレジットカードが修の指先で光る！
　このナチュラルボーンセレブリティな様子と、肩で甘えまくるマーブルを優しく撫でる様子が同居している、そこにギャップを感じさせないのが修の修たるところなのかもしれない。