仁義なきアウトレット・ウォーズ｜リアクション

仁義なきアウトレット・ウォーズ

「あれ？　せんぱい！　若菜せんぱーい！」
「あっ……あはは……。ぐ、偶然だねぇ羽衣ちゃん！」

　無邪気に先輩に駆け寄る羽衣と、途中何度か視線を感じてはいたがあえて追求しなかったマキナ、そしてばつが悪そうに、だが尾行をしてしまってたことは悟られないように取り繕う若菜。

「せんぱいも買い物に来てたの？　声掛けてくれればよかったのにー」
「いやいや、だってほら、デートの邪魔は出来ないし……」
「えっ、デート！？　違うよ、普通の買い物だよー！　それにマキナさん、女の人だよ？」
「マキナさん……ああっ！！！？」
「や、十文字さんごぶさただね」

　若菜は今の今まで、星ヶ丘の教会で顔見知りのマキナが羽衣の同行者だということに気づいていなかったらしい。まさかの顔見知りだった事実に顔から火が出そうだ。

「（私のばかっ！　よりによってマキナさんを間違えるなんてー！！）」
「ええやんええやん、間違いなんか誰にでもあるで」

　ここまでの尾行を好奇心で見守ってきた蘭月にあっけらかんと笑われては若菜も立つ瀬がない。確かに自分ひとりで空回りしてしまっただけだし、誰にも迷惑はかけていない（たぶん）のだから、これ以上もだもだ転がっていても仕方ない。

「（デートかぁ……マキナさんかっこいいから、ちょっと嬉しいな）」

　羽衣のほやんとした思いをよそに、当のマキナはそろそろエネルギー切れのようで。

「まあ、いいじゃない。それよりさ、せっかく合流したんだから甘いものでも食べに行こうよ。そっちのきみもどう？」
「さんせーい！　買い物しまくってへとへとやわ！」
「そだね、行こう！」

　物おじしない蘭月が元気よく手を上げて、若菜もやっと気を取り直す。四人とも立ちっぱなし・歩きっぱなしで買い物を続けていたから願ったりかなったりだ。

「すいませーん、ショーケースにあった日替わりケーキ一種類ずつ全部ください。あとアイスコーヒー」
「せんぱいけっこう買ったんだねー。えっと、黒糖ドーナツとアイスティーのセットお願いします！」
「ほなあたしミルクレープ！」
「えへへ、奮発しちゃった！　あ、私はキャラメルパンケーキにバナナとバニラアイスのトッピングで」
「お、次はそれ頼もうか……冷たいのも食べたいな」

　それぞれの戦利品を置いて、腰を落ち着けて、今度はおしゃべりに花が咲いて。暑さのせいで体力も削られたし、すぐに回復するにはやっぱり甘いもの……と、マキナは日替わりケーキを五種類ぺろりと平らげ、既に若菜が頼んだのと同じパンケーキのトッピングをどうするか悩み始めている。
　納得の行く買い物も出来たし、甘いものも食べたし、大満足の一日があっという間に終わっていく。だが、夏はまだ終わらない。そう、今日買った服を着倒すまではまだ。

「これ着てまたどこか行こうか。その時は十文字さん、ちゃんと声かけてね？」
「はぁい……」

　すっかり先輩としていいところがなかった若菜だが、羽衣が楽しそうにしているのでまぁいいかと思ったり。

「あー、楽しかったわ！　帰るん惜しいなぁ、まだ買い物し足りんわー……あれっ？」

　シーサイドタウン駅でそれぞれ帰路につこうとする四人。だが、切符を買おうと財布を出した蘭月がすっとんきょうな声を上げる。

「蘭月ちゃん、どうしたの？」
「あかん、帰りの電車賃残ってへんかった！」
「あはは！　それだけ買えばねえ。仕方ない、皆で歩いて帰ろうか？」
「いいねー！　せんぱい、持久走の特訓しよー！」
「ちょっ、荷物持ちながらは厳しいって！」

　少女たちの、暑くてきらきらした、ある夏の日。
　それはもうちょっとだけ続く。

　家に帰るまでがバーゲン、ですから。

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あとがき

担当マスター：瀬島
ファンレターはマスターページから！

お待たせいたしました、ブロンズシナリオ『仁義なきアウトレット・ウォーズ』お届けいたします。
このたびはご来店ありがとうございました！

夏といえばバーゲン、バーゲンといえばアウトレット……ということで、
めいっぱいショッピングを楽しんでいただけましたでしょうか？
僭越ながら、皆様の夏服選びの一助となれば幸いです。

それでは、また近いうちに次のシナリオでお会いしましょう。

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