仁義なきアウトレット・ウォーズ｜リアクション

仁義なきアウトレット・ウォーズ

「人の数がすげぇな。何か欲しいものとかあるか？」
「ふーーーむ、悩ましいでありますな。荒海さんはどういったものをお探しでありましょうか？」
「俺はシルバーアクセ。地味に高いんだよな」

　こう人が多いとのんびり見たいところから見るわけにもいかず、入口のフロアマップの前で、まずは作戦会議。気になるショップのシルバーアクセサリーがバーゲンで値下がりしているのを期待している藤吾と、本屋も気になるしホビーフロアのモデルガンショップも覗いてみたい杏子。じゃあまずはここから近いメンズファッション雑貨のフロアに……となったところで、杏子の目がとあるマネキンに釘付けになる。

「（か、可愛いでありますな……）」

　各ショップから集まった今回のいちおし商品のディスプレイ。その中にある、紺色の五分袖ワンピース。スクエアネックと裾にそれぞれ施されたノルディック柄の白いレースが、シンプルなAラインのワンピースを愛らしく彩っている。春ならカラフルなタイツや柄物のスカーフを合わせて、夏はそのまま一枚で着て涼やかなアクセサリーや可愛いサンダルと一緒に。秋はタートルネックを下に着たりと、使い回しのききそうな一枚だ。

「へえ、こういうのが流行ってるのか。可愛いな」
「！？」

　杏子の目線を追った藤吾は、何の気なしにワンピースの感想を言ってみせただけだった。
　が。

「（こ、これを着たら似合うなとか可愛いなとか、荒海さんから言っていただけるのでありましょうか……って、何を考えてるのでありますか、自分！！）」

　あわあわと思考の追い付かない自分の脳に喝を入れつつ、杏子はもう一度ワンピースを眺める。今まで目にも入らなかったような可愛い可愛いワンピース、何故あれが気になってしまったのだろうかと。回らない頭で考えても、しっくりくる答えは出ない。杏子の頭の回転を止めてしまった当の藤吾はのんきにすたすたと目的のショップに向かおうとするが、人ごみの中で杏子のフォローも忘れない。

「ほら、行くぞ。はぐれるなよ」
「……はっ、了解であります！！」