紅い玉がでるまで｜リアクション

紅い玉がでるまで

　ミッシェル・ナイスゲイについて語る時がきた。
　
　ゲイバー『ジオフロント』を経営する彼女。
　彼女はごく善良な人物だ。美少年をこよなく愛し、お目当ての美少年を見ると、接触を働かずにはいられない、という点を除いては。
　玉が出る、それもイケメンからという謎の事態は彼女の心を躍らせる。
「イケメンの玉を集めまくるわよーん！」
　倫理コードを引きちぎり、ナイスゲイは不敵に笑う。　

　獣が、
　獣が跳躍する！

　さしあったっての標的は誠也。
　純朴な彼。ぎこちない笑顔に、時折見せるクールな翳。

　ナイスゲイの瞳が光る。
「人間から玉がでるらしいわねん？」
　ナイスゲイの舌が、ぬらりと濡れる。
「それってやっぱり、尻子玉かしらん？」
　ナイスゲイの全身が、獣の気配を充満させる。
「それともやっぱり、殿方のアレかしらね？」
　妖しげに全身をくねくねさせ、誠也に向けて跳躍する。

「紅い玉がでるまで、がんばっちゃうわよ～ん！」

　迫る影に気づかぬ誠也は、新たな玉を口にする。
　意味もなく怒りが込み上げてきた。
　冷静な顔で、拳をうならせる。

　たまたま飛び込んできたナイスゲイは、それを顔面で受けた。

「何か当たったッすか？」首をかしげつつも、自分の玉を見失わない様に、誠也は走る。

　顔面に強打を受けても、なおナイスゲイは立ち上がる。
　口からころりと転げる、鮮明な色彩の玉。
　彼以外にも、イケメンは居るはず。
　獣は跳躍していった。