紅い玉がでるまで｜リアクション

紅い玉がでるまで

　普堂しおりは、自分の青い玉を見ていた。
　さっき口から転がり出た奴だ。
　なにかが、引っかかっていた。

「うー、終わらないよ！」
　しおりは夏休みの宿題と格闘していた。
　マイペースで、興味のあるものにはまっしぐらな彼女、宿題がぎっちり残したままだった。
　覚え込んだ公式を全力で思い出し、何とかノートを埋めていく。
「どうしよう！」
　嘆きの声とともに、ポンと玉が弾ける。
　ノートの上に転がる、青い玉。

　しおりはそれを、弛緩した顔で見た。
　すっきりした。
　なんだか心が晴れて、もやもやが消し飛んでしまったようだ。
　どうしようって焦りも、絶望感も忘れた。
　公式も忘れちゃったけど。

　玉を突くと、ジワリと冷気が指先に伝わる。
　握り込むと、気分が滅入ってくる。
「うーん、不思議……」

　しおりはバタンと横になり、ケータイを取り出す。
　あちこちに玉の噂があふれかえっている。
　中には、膨大な量の情報を整理しているものもある。

　喜が黄・橙。
　哀が緑・青。
　怒が紺・紫。

「……虹の色みたい」しおりは呟く。「光の三原色？」