ミエコ、再び｜リアクション

ミエコ、再び

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「ミエコちゃんっ、相変わらずキュートなのです！」
　いち早く現場に駆けつけた椿美咲紀は、口元から可愛く尖った八重歯を覗かせながら、歓声を上げた。
　動植物を愛する懐の広い彼女、無邪気さも魅力の一つである。
「今日のラッキカラーは、きっとトリコロールね♪」

「ミエコちゃん、大きくなったね……」
　ほぅっと息をついたのは、腕に猫型パペットの『ハルくん』をつけた、恵御納夏朝である。
　猫ヘアピンで柔らかな髪を飾った少女は、ミエコとの思わぬ再会に、あどけない黒目がちの瞳を潤ませた。
「あ、ろっこんで大きくなったっていうのは、分かっているんだけど！」
　ぱくぱくと口を開いて、ハルくんが夏朝の言葉を補足する。
「前は生後２ヶ月で産毛ふわふわだったけど、今はすっかり娘盛りのお姉さんになったって事よね？」
「うん」
「猫ちゃんは、本当に成長が早いのですねー」
　美咲紀が嬉しそうに言い、夏朝もはにかんで頷いた。
　その手元で、ハルくんが楽しそうに体を左右に振った。
「もし人間だったら、夏朝や椿さんと、変わらない年頃なのかもしれないね！」
「そっかぁ、私達、すっかり追いつかれちゃったのね。
　でも牛さんクラスの大きさになろうとも、仔猫の可愛さは正義なのです!　ぎゅ～ってしたーい！」

「確かに、成長したな～」
　女の子達のノリにはついていけていないものの、御剣刀も公園を囲ったフェンスから、身を乗り出しながら感慨深げに呟いた。
　ふわもこの仔猫のよちよちした足取りは、随分パワフルになった。
　でも味のある三毛は、やっぱり刀が知るミエコに違いなくて。
　ちょっと親の気分になり、胸が熱くなるような気もする。

　猫好きの後木真央も、やって来て、感極まった。
「おおおぉぉ！　夢にまで見た、巨猫様なのだ！！！」
　声を張り上げる、真央。
　彼女は今日も、赤いネコリュックを背負って、陸上部の皆と色違いのお揃いで作ったＴシャツと、学校指定の赤いジャージを着ている。
「夏朝ちゃんに、美咲紀ちゃんに、刀ちゃんも、もう着いてたのだ♪
　さすがなのだ、やはり巨猫様は魅惑なのだ♪
　さっきのテオの話、現実に戻ってもバッドステータスが継続しないという事なのだ、もしかして？」
「うん、多分……」
「多少の無茶をしても、大丈夫そうだよな」
　反感を買ってばかりだったテオだが、随分気を遣うようになったものだと刀は思う。
　もっとも、横柄でいい加減なのは、相変わらずだが。
「きゃっほぅなのだ♪　手段選ばず、もふもふ堪能なのだ……フッ、これで真央ちゃん勝つるのだ～」
　しかし美咲紀が、駆け出そうとする真央の腕を引っ張った。
「駄目なのです、真央ちゃん！」
「えっ！？　どうしてなのだ？」
　恨みがましい目を向ける真央に、美咲紀はコホンと咳払い。
「こういうのは順序が大切なのです。
　ミエコちゃんは人様のおうちのペットですから、飼い主様から許可を取るのが礼儀なのです」
　この状況でかよ、と刀がずっこけた。
　しかし、真央は納得して首をカクカク縦に振った。
「なるほどなのだっ！
　巨猫様を前にしても、冷静さを失わないとは、美咲紀ちゃんスゲェのだ！
　鋼の意志なのだ、超絶ソンケーするのだ！」
「わからねえ、女心ってヤツが……！！」
　頭を掻き毟りながら、刀は悶絶した。

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