あなたと合体したい（物理）｜リアクション

あなたと合体したい（物理）

●おっきいクマとかと、ちいさいクマの場合

　クマさんがとっとことっとこ歩き出したので、皆さん彼についていきます。
　彼が向かうのは人通りの少ない病院入り口。大きなクマが現れた場所です。
　そうして辿り着いた先には、たしかに大きなクマが居ました。
「……邪衣か？」
　八神修君が呆れ顔で尋ねると、大きなクマ――の被り物にくっつかれた邪衣士君がこくんと頷きます。
「ついにクマに乗っ取られたか」
　毒島林檎さんが物騒なことを言いますが、士君が突っ込む前に「HEY主の友達ドモォー！」「わっちら迷子なのじゃ」「ござる」と、クマの被り物の上からくっついているカピバラのぬいぐるみさんたちが一斉に喋り出しました。
　しかも彼ら以外にも士君にくっついている人が居るではありませんか。
「っておいカピバラ勢なに勝手にしゃべり始めてるんだ！　う、くる、じ」
　首には狐の尻尾（首を絞めているような……？）。
「ほぇ～？　ど～したの～？」
　背中には大きな白アザラシのぬいぐるみ・しろたん。
「こんにちは毒島さん。私はクマですけど、本体じゃないですから」
　そしてお馴染みなクマの被り物さんは、なんだか喋りながら士君を食べているようにも見えます。
　なかなかファンタジーな光景ですね。
　そしてその姿を確認して、ちよちゃんのクマさんが空いている左手で士君を病室に引っ張っていきます。
「えっと、お友達だと思っているんでしょうか？」
「たぶん、そうじゃないかな？」
　宮祀智瑜ちゃんとちよちゃんは内緒話を楽しむように笑い合って、病室に戻って行きました。

　病室に戻って――
「……タブレット、なにか音楽でも流してくれるか？」
「あー！　じゃあちよ、ももシロがいい！」
「ももシロですね。畏まりました」
「ちよちゃんはももシロが好きなんですか？」
「って、おい!!　ナニ普通に和んでるんだ!?」
　元のように皆で仲良くお話をしています。
　それに対して士君は思い切りツッコミを入れます。
　けれど周りの反応は冷たく、もういっそゆっくりしていきなよとでもいう空気が士君にのしかかります。
　その時ジイィィィィ。クマさんの執拗なまでの視線に気がつきました。
「なんだよクマ公こっちを見て……」
　なんだか気味悪がる士君に対して、クマさんは筆談で答えます。
『ひとちがい、きみ、だれ？』
「～ッ！」
『かえっていいよ』
　どうやらクマさんは、どなたかと勘違いしたようです。
「アンタ……馬鹿にしてるのか？」
　当然士君は怒っています。それも目が据わるくらいに。
『ごめんね。ばいばい』
　火に油を注ぐクマさんに、見ている私までヒヤヒヤしてしまいます。
　そして――士君は。
「……帰り道教えろ！」
　結局迷子には勝てないのでありました。
「タブレット、猫鳴館までの地図を頼む」
「了解しました」
　恥ずかしいような腹が立つようなで帰っていく士君。
　そんな背中を皆で見送っていると、彼が一枚の写真を落としていったことに気がつきます。
　クマさんはその写真を拾い上げて――大事そうに抱えます。
「クマ？」
『たすけてくれた。おめめのおにいさん』
　ちよはその写真を見て「さっきのお兄さんにそっくりだね」と不思議そうに言いました。

　そんなところへ、また来客があるようです。　