サマー！部活動のお時間です！～文化部編～｜リアクション

サマー！部活動のお時間です！～文化部編～

　次は、全員集まって練習するシーンだ。
「ガールズバンドって感じのポップで明るい曲作ってみた」
　深雪がキーボードで曲を披露する。
「いいですね」
「可愛くておしゃれな感じ！」
「こういうの作れるってすごいですね」
　皆満足そうに頷く。
　担当は冥がボーカル、楽器ができない笹鳴と紫蓮は何にするか迷ったが、設定上も楽器ができない笹鳴がドラム、紫蓮は経験ありの設定でベースとなった。
　慣れないドラムを一生懸命叩く笹鳴を冥が励まし、紫蓮は弾いている演技をしながらフォローする。
　合間に日常風景の撮影も行われた。
「私服シーンも入れてこ！　みゆもこれ着ようね！」
　どこからか可愛いワンピースを取りだす冥。
「これ着るのかよ……」
　嫌そうな顔する深雪だが、なんだかんだ言いつつカメラが回っている時はそんな素振りは見せない。
「いいねーみんな似合ってるよー」
　監督風を吹かす冥だった。
「ふう疲れた～。次は寝子島海岸で円陣を組むシーンの撮影ね。やっぱりこのシーンは夕焼けの時間の方が……いや、それとも朝日？　月明かり？」
　疲れたと言いつつ、紫蓮の心はもう次の撮影に飛んでいる。
「月明かりよりは夕焼けかな」
　深雪が言う。
「そうだね、青春だし！」
　賛成する冥。
　そんなわけで、海岸での撮影は夕方行われることになった。

　
「遅いですよ、メイ先輩」
　時間前に来ていた紫蓮が言う。　
「お待たせ～、ごめんごめん。」
　遅れてきた冥が手を振った。
　海岸での撮影の日、映研の皆が駅に集まった。
　海水浴場から少し離れた砂浜へ向かう。
「このへんでどうかな？」
「いいんじゃない」
　紫蓮がカメラを覗く。
「あ、こっちからだと逆光？　全員が入らない！？　それだと遠すぎ？」
　バラバラだった一同が音楽を中心にひとつになっていく大事なシーンだ。
　最高のシーンにしたいと思うといろいろ迷う。
「うーん、やっぱり映画作るって大変なのねぇ。すっごく時間かかってるけど実際の映画になるのはかかった時間の１０分の１ぐらい？」
　紫蓮が溜息をつく。
　やっと撮影ポイントが決まり、三脚に立てたカメラを回して撮影開始。
　冥が、深雪が、笹鳴が、紫蓮が、円陣を組み、手を重ねる。
「寝子島も、音楽も、大好き！」
　美しい夕焼けの中、みんなの声が一つになった。
「バッチリです！　いいシーンになりましたね」
　夕焼けに染まった笹鳴の顔は輝いていた。

　そしてラストは、講堂でのライブシーンだ。
ライブ会場っぽい飾りつけは深雪や笹鳴が担当した。
　後は編集でなんとかなるだろう。
「うわあ、本物のライブ会場みたい……」
　エキストラとしてやってきた北原みゆきも興奮を隠せない。
　ねこったーで、街角で、冥が情熱をこめて勧誘したおかげで、十分な数の観客も集まった。
「これだけお膳立てすりゃ結構いい画が撮れるんじゃないか？」
　深雪も満足そうだ。

「みんな、準備はいい？　サイコーの瞬間を、創ろう」
　演奏は弾いてる演技をして撮影し、音楽は後で合成する。　
　特訓の成果で笹鳴も紫蓮も、大分演技が様になってきていた。
　
　限りある時間、限りある生命
　夏は短く、青春は待ってくれない
　思いっきり、楽しもう！

　冥は心を込めて全力で歌う。
　それは演奏する皆も同じだ。
　この一瞬を永遠に刻もうと。

「夏、サイコー！」
　歓声と、惜しみない拍手が鳴り響いた。
「お疲れ！」
　柄にもなく冥にハイタッチして喜んだのは深雪だ。
　そのまま笹鳴と紫蓮も、ハイタッチの仲間に入る。
「ラストシーン、か。正直すごく疲れたけどこれで一区切り、って思うとちょっと寂しいかな」
　紫蓮の言葉に皆が頷く。
「お疲れさん。ここからも大変な作業続きだが……まああとはゴール目指すだけだ。いい映画にしようぜ！」　
　深雪が言う。
「そうね、これから編集やらなんやら地味な作業が続くんだけどね。私も手伝うから、最後まで頑張りましょ。一号試写は、皆で一緒に、ね。」
「ありがとうございます。なんとか、納得できる映画を作りたいです……！」
　
　その後、慣れない編集経験に悪戦苦闘しつつも、無事一号試写を迎えることができた。
　サイコーの笑顔が、そこにあった。