林間学校でサバイバル？　登山と調達デーのお話｜リアクション

林間学校でサバイバル？　登山と調達デーのお話

　一方、こちらは修たちの班。揃った食材は中々のものである。調理をしようと、修は借りてきた調味料や食材を見る。
「やっぱり、バーベキュー的な味がいいかな……」
　野菜やウインナー、肉などを見、頷く。そして、手早く切り刻んで炒め始めた。堂鉄が見つけたミツバはお吸い物に使用される。
「お～、八神っち超うめぇじゃん！　自分も先輩として負けられないかなー？」
　と、南波太陽も張り切って魚の処理をする。漸くラッキーで釣った２匹（しかも大きい）ヤマメの内臓をどうにか出し、綺麗に洗って塩焼きにする。ちょっとこげたもののそれもまたご愛嬌だ。
　また、修は調理の合間に卵と牛乳、砂糖を使ってミルクセーキを作っており、それを飲むと疲れが和らぐ気がした。
「ん？　八神は甘い物、好きだったっけ？」
「ただ単に、疲れた体を癒すためだよ」
　轟にそんな事を指摘され、くすり、と笑う修。ちなみにこのミルクセーキは美咲紀やののこにも好評だった。
「こっちの準備は整いました。いつでも食べられます」
「飯も炊けたぞー」
　堂鉄と轟の声に修が笑顔で頷く。お吸い物と野菜炒め、魚の塩焼きにご飯、とシンプルな家庭料理ながらあったかさを感じる物が出来上がった。そろって食べてみると、これがまたとても美味しい。
（……こういうのも、たまには悪くないのかもしれません）
　友達というモノに苦手意識を覚える堂鉄であったが、食事をしながらなんとなくそんな事も考えてみるのだった。

　こちらは、といき達の班。夏の野菜にイチジク、川魚、カワエビ、こごみや山うど等の山菜が揃う。そこで考えたのが、シンプルなサラダと塩焼き、天ぷらだった。デザートはイチジクだ。其々が器用という事もあり、一番効率よく準備を進める事が出来た。様子を見に来た礼美や幸太も、山菜と夏野菜の天ぷらには高評価をつけ、牡丹とといきはご機嫌だった。
「わぁ、こんなに香ばしいんだねぇ。山菜の苦味もまた格別♪」
「自然の中での食事は、こんなにも満たされる物だったとは」
　丸美と月詠がどこかほっこりとした様子でそういえば、牡丹がうんうん、と頷く。
「先生にも喜んでいただけたし、すっごくいい日ですぅ～」
「そうだにゃ。思いっきり動いて、お腹もすいて、美味しいご飯が食べられたいい日だにゃ」
　といきも気になる先生から褒められた事で嬉しさが止まらない。どことなく女の子らしいオーラが半端ない彼女たちは、楽しくお喋りしつつこのひと時を楽しんだ。

　鳴の班も、賑やかに調理が進んでいた。野菜と牧場で貰った卵や豚肉・鶏肉、ウインナー等で、この班は野草を全く得ていないが食材は豊富だ。
「シンプルにお肉や卵を焼くのもいいね。でも野菜があるし……」
「真央ちゃんはお味噌汁を作るのだ。野菜炒めは大賛成なのだ！」
「バーベキューも、良さそうですね」
「どれも美味しそうで迷っちゃうね」
　どれを作るかで悩んでしまったが、結局バーベキューとピリ辛風味の野菜炒めと味噌汁を作る事になった。鳴が手際よく材料を刻み、時子がバーベキューを、夏朝は野菜炒めを作る。真央はご飯を炊きながら味噌汁もつくり、汁物の無い班にもおすそ分け。迷った割りに早く完成し、早速食べてみれば、素材の味を生かした料理が並んでいた。
（おいしいっ！）
　鳴はみんなで食事を取った事で心が満たされ、『正常』な味覚を得る。彼女は口外しないがもれいびで、『誰かと一緒に食事をし、充足感を得る』事でろっこん『マジュンハンメェー』が発動する。効果は食事の間のみではあるが、味覚障害が消えて食べ物の味を『正しく』感じとる事が出来るという物だ。
（おいしいって、うれしい！）
　思わず嬉し涙を浮かべる彼女に、時子たちは初め驚く。が、楽しい食事には変わりない。４人は農場や牧場での出来事を語りながら楽しく夕食時間を過ごした。
　先生方を誘う事は出来なかったものの、様子を見に来た睦子が料理を口にし、「実に美味しいですね」と笑顔で言って貰えたのが嬉しかった事を付け加えておく。

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