ちょっと焼きそばパン買ってこい！｜リアクション

ちょっと焼きそばパン買ってこい！

【諭す者たち】

「「「もうやめて！」」」

　桜庭、天馬、常葉、そして小山内が飛び出してきた。
　遅れて千木良もやってきた。
「刀君、これは一体どういうことかな？」
　カンカンの桜庭、御剣に詰め寄った！
「喧嘩は良くないと思います！」
　常葉も桜庭と一緒に御剣を詰める。
「いや、ほら、俺たちはただ、悪い先輩を懲らしめようと……」
　弁解する御剣に、
「やりすぎだってば！」
　桜庭、吠える！
　隣の常葉も御剣に対してお冠だ。
「１人に数人掛りって良くないと思います！　それに！」
「それに？」
　首を傾げる御剣に、一転して涙ぐむ常葉。
「心配、だったんですよ……？　刀君が怪我しないか……、私……！」
「……すまなかった、常葉」
　逆巻、恋愛フラグを感知して顔をしかめる。
　すかさず２人を引き剥がす。
「悪いけど、僕の前での恋愛フラグは全て粉砕させてもらうから。これ以上、充実なんてさせないよ？」
　常葉、思わず落胆！
　御剣は気付いていないのか首を傾げている。
　そこへ天馬がやってきて、旨塩唐揚げ焼きそばパンを取り返した。
「んー、もっと他に方法があったと思うよ？」
　苦笑いを浮かべ、穴の中の赤西に手を差し伸べる天馬。
「もう意地悪しない？　約束してくれるなら、一緒にこれ食べよ？」
　天馬の発言に一同驚愕！
　天馬は当然のように言ってのけた。

「だって、この旨塩唐揚げ焼きそばパンが食べたいから、先輩は晴美ちゃんに意地悪したんでしょ？　だったら、最初からみんなで分けて食べようよ！」

　にっこり笑う天馬の笑顔に、皆の毒気が抜かれてしまった。
「……ふん、調子狂うな」
　草薙は役目が終わったとばかりに立ち去っていく。
「次、目障りな事をしてみろ……！　自宅を襲撃し全て巻き込む……。お前を肯定したからな……。文句ないな？」
　最後に穴の中の赤西に向けて言い放ち、その場を後にした。
　その後ろ姿を、逆巻は眺める。
（今日、僕は分かったよ。草薙、あんたと一度、サシで戦ってみたい。あんたのような奴なら、好敵手＜トモダチ＞になれるかもしれない）
　そのまま御剣にも目を遣る。
（御剣も、一度手合わせ願いたいな。僕の好敵手＜トモダチ＞として、御剣は相応しい）
　一方、桜庭と天馬に引っ張られて脱出出来た赤西は、涙を流していた。
『どうしてこんなことをしたの？』
　小山内はどうしても赤西の動機が知りたかったのだ。
「……俺様だって、１年の時、よくパシリにされて……。ようやくそいつらが卒業して、俺様の天下だって思って……」
「だから同じことを繰り返したんですね……」
　逆巻、呆れてそれ以上の事とは言えなかった
『だからって　よわいひとをいじめちゃダメ！』
『はるみちゃんにあやまって！』
　いつものスケッチブックではなくメモ帳での筆談だったが、文字に小山内の感情が滲み出ていた。
　小山内自身もぷっくりと膨れっ面でプンプン怒っている。怒る姿も可愛らしい。
　赤西、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で千木良の前へ出ると、何度も土下座をして謝った。
「ごめんなさい！　もうしねぇから！　俺様、いや俺が悪かった！　ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……！」
　千木良、赤西の急な謝罪にオロオロするばかり。
　そこへ。

「千木良後輩、もういいんじゃねぇか？」

　ひょっこり現れたのは屍だ。
　何故か柏田も一緒だ。
　そして２人は両手に持った袋に、たくさんの購買室のパンがギュウギュウ詰めになっているではないか。
「赤西、先輩ってーのは、後輩をいびるんじゃなくて見守るもんだ。まだ４月だしよ、軌道修正出来ると思うぜ？」
「か、屍……！」
　赤西、屍の言葉に号泣するのだった。
（やれやれ、『千木良に旨塩唐揚げ焼きそばパン買ってこい』って言おうと思ったけど、この様子じゃ必要ないな）
　御剣は小さく溜息を吐いた。
「事件解決、ご苦労様だ。飯、みんなまだだろ？　折角だから一緒に食おうぜ。俺の奢りだ」
　屍の提案にわっと喜ぶ１年生たち。
「天馬さん、あのレースの攻略法、どうやって思い付いたか教えてよ！」
　ずずい、とメモ片手に近付く柏田に、
「にょ、にょえええー！？」
　と困惑の声を上げる天馬であった。

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