＜CI@SP＞ふたつのミドリのゆくえ｜リアクション

＜CI@SP＞ふたつのミドリのゆくえ

（どういう事だ……）
　状況を見守っていた鮫島裕也は、アバターの悠華としては『ふええぇ＞＜』と慌てていた割に結構冷静に事態を受け止めた。
（最悪運営停止になってしまっても困るし、ログアウトする前に騒ぎを収束させておかないとな。子供は苦手なんだが……）
　万一自らのアバターも変化させられてしまった場合の算段をつけながら、裕也は悠華を操作してアーティに声を掛けようとした。
　けれど、彼女が八神修や霧生深雪たちと話をしているのを見て、一旦留まる。
『あの女の子、あちこちに飛び回ってるみたいだから手分けして探そう！　イメージする力を鍛えるためにも、いろんなところにいって勉強だよ！』
「悠華様」
　裕也の打ち込んだ言葉にアーティは微笑んだ。
『アーティはオルフェさんたちと一緒かな？　だったら、僕は先に旧市街の方に行ってみるね。さっきそっちに行ったって連絡があったから！』
「はい！　お願いします！」
　結局先行する形になったが、アーティは信頼の目で悠華を見送った。

「妹……みたいなものなのかな？」
　軽く苦笑する修に、アーティは少し思案気な素振りを見せる。
「妹というよりは、姉……お母さん、みたいな感じでしょうか……」
「お母さん？」
　あの少女の幼い言動とはかけ離れた印象に、さしもの修も不思議そうな表情だ。
「あの方を見ていると、なんだか温かくて懐かしいような気持ちになるんです。見えない大きな何かが、わたしを包んでくれるような……」
　そう呟くアーティの微笑みは、何処か幸せそうだ。

「ライブ？　今からか」
　その提案に深雪は少し驚いた様子だったが、修は続ける。
「アーティやあの緑の子も経験はないだろう？　二人とも聴きに……いや、一緒にやらないか？」
「えっ……」
　戸惑うアーティ。
　深雪は思案気に口を開く。
「確かに俺も、蒼月庭でライブやりたいとは思ってたけど……何も今じゃなくても良いんじゃないか？」
　蒼月庭は個人運営の施設だから、現実よりも使用の申請は楽だが、今から申し込んで会場を取れるだろうか？
「彼女には多くの経験から学習させなくてはならない、これもその一環だ。相手は生まれたてだから根気良くな」
　修は、少女が充分に経験を積んだら直樹をなんとかして貰うつもりだった。
「でも、すぐに準備出来る事ではないんですよね？　今はとにかくあの方をお止めしないと」
「そうだな。シュウ、ライブのはひとまず後でな。手配は俺がしておくから」
　深雪は修に声を掛け、走り出すアーティを追う。
「……こんな事、出来れば言いたくないんだけど」
　見送った直樹が口を開く。
「『どうやったら彼女が充分に経験を積む』か。みんなその為に知恵を絞ったり、自分の経験から色々試みてみようとしてくれている筈だよ……」