●SIDE:VR●
「
……て……助けて! お願い、ここから出して……!!」
インターネット上の仮想世界、キャットアイランド。
マヌカノイドたちが開けた大穴から、人々は助けを呼ぶ少女の声を聞いた。
「なんだ? 何が起きたのだ!?」
きょろきょろと辺りを見回す
李 小麗。
「どうやら、キャットアイランドと現実の世界、双方同時に大変な事態になってしまったようでございます」
「わっ! おねーさん、どこから出てきたのだ!」
「あら、これは失礼を」
「テレポートで飛んで参りましたわたくし、
雪代 伊織がご説明しましょう」
異変を起こしていたマヌカノイドたちは、外界からの干渉が途絶えた時、なんと記念樹公園のシンボルツリーの前に大穴を開けて、更にその中に突入してしまった。
「大きな穴の向こうに広がっていたのは、キャットアイランドの生みの親である
神木 直樹さんすら存在をご存知なかった未知の領域、謎のダンジョン。その奥から聞こえる少女の助けを呼ぶ声を、マヌカノイドたちは感じ取っていたのでございます」
「あ! なんかヘンなやつがいて、先に進みたそうなマヌカノイドをどんどん壊してるのだ!?」
ダンジョンには誰かが『なりそこない』と呼んだ、流体金属のようなモンスターが多数確認されている。
それらを倒しながらダンジョンを攻略しなければ、助けを呼ぶ者の許へは行けない。
「……ですが、私たちにも対抗する手段があったのですわ! それにマヌカノイドも、バックアップさえあれば復元出来るとの事でございます」
「なんだそうなのか? それならしゃおりーも、八極拳の練習の成果を活かせるかも知れないのだ!」
「俺たちは倒されてもスタート地点に戻されるだけだが、お前たちには本当に危険な場所みてぇだぞ。……それでも行くのか、アーティ」
霧生 深雪の問いに、マヌカノイドの少女アーティははっきりと頷いた。
「怖くない……とは言えません。でも、わたしたちを呼んでいた方は、ずっとあの気味の悪い場所で……独りで助けを待っていたんだと思うんです。わたしも迎えに行って差し上げたいですし……きっと、皆さんのお役にも立つ事が出来る筈ですから」
アーティや自我に目覚めたマヌカノイドは、ある種の感知・分析能力を持つらしく、敵性モンスターの接近を察知し、能力を知る事が出来るようだ。
祈るよう両手を胸に当てる彼女に、深雪はふと微笑する。
「お前の力になるって、言っちまったからな。絶対に無理はするなよ?」
「……! はい!」
●SIDE:分断された寝子島●
人形やぬいぐるみが一斉に暴れ出した、現実の寝子島。
予兆を察知したテオによって、人形ともれいびたちは、ひとをも巻き込んで【分断された寝子島】に閉じ込められる事になる。
「真由美はどうなるんですか? あの子が悪い訳じゃないんですよね……?」
事件の発端となったのは、人形に仮初の命を与える力を持つ幼い少女、
三浦 真由美(みうら まゆみ)。
養母の
なつめは、彼女の本当の想いにショックを受けつつも、その身を案じていた。
真由美の暴走した力を更に増幅させているのは、ひょんなことから仮想空間から飛び出した
緑色の小鳥だ。
時間切れを待つ以外にこの状況を解決するには、小鳥と真由美の接触を絶たねばならない。
「三浦邸に乗り込み、立て籠もっている人形たちをなんとかして彼女から小鳥を遠ざける。だが、拠り所としている小鳥を無理に奪えば、あの少女の心は……。さて、どうする?」
思いあぐねる
シグレ・ナイトウォーカー。
「人形については数が多く、妙な技を使ってくる人形もいるようなのが厄介ですが、一体一体を相手取るの自体は造作もないでしょう。しかし……耐久力が低く、倒した際破損してしまう可能性が高いです」
静かにテグスのようなものを取り出す、
常闇 月。
「なんだって!?」
霧生 渚砂は動揺した。
「あれは……プレゼントする為に作った、大切なぬいぐるみなんだ! 壊されて堪るか!
何か、何か方法はないのか!?」
「人の手による美の結晶、思いの込められたもの……俺も、破壊するのはしのびない。だが、どうやら戦う以外の道も見出せそうだ」
とシグレがねこったーのログを眺めた。
『
裏通りで暴れていたぬいぐるみが、急に動かなくなったんだよ。たまたま側のお店の人が『Silhouette(シルエット)』っていうバンドの『Le etoile』っていう歌を聴いてて、ちょうどサビのところだったみたいだけど……』
『
ぬいぐるみが止まったの、偶然じゃないかも知れないぜ。俺の方も、ダチが『旅立つ君へ』って歌を歌ってたら、いきなり何か物音がして、そっち見たら人形が落ちてたんだ』
「歌?」
「この二つの曲に、何か共通点が……?」
渚砂や月、一緒にいた者たちも奇妙な符号を訝しむ。
大天使 天吏は、人形たちによって真由美とともに緑の小鳥が運び込まれた三浦邸を見上げていた。
『このこと あのこを たすけて』
不思議な波動を感じた時に聞こえた小鳥の悲痛な願いが、微かに蘇る。
少女と引き離せば、辛うじて力尽きることだけは防げる。
けれど、その後も手を講じなければ小鳥の消滅は免れない。
「……あなた自身はどうしたいの? どうなりたいの……?」
風前の灯、最後の一葉。
『この世のものじゃないっていうならぁ、
元の世界に戻してあげたら良いんじゃないの~ぉ?』
彼女の『ともだち』が囁いていった手段。
それはあの世界に混乱をもたらしかねない、パンドラの箱だった。
こんにちは、羽月ゆきなです。
このシナリオは、キャットアイランド初シリーズ第二話(全三話)となり、それぞれ二つのサイドに達成すべきミッションが設定されています。
アクションでどちらのサイドに参加されるか指定して頂く事になりますが、今回はシナリオ終了まで別サイドには移動出来ず、別サイドにいるキャラクターさんと連絡を取る事も不可能ですのでご注意下さい。
この状態はシナリオ終了時に解除され、次回のシナリオはその直後からのお話になります。
ただし、今回も起きている事件には特に関わらず、キャットアイランドで普通に遊ぶよというキャラクターさんがいてもOKです。
今回が初めて! という方も、お気軽にご参加下さい。
【VR】キャットアイランドサイド
主にキャットアイランドでの行動になり、もれいびはダイブして自分のアバターと同化する事で、生身に非常に近い状態で活動する事が可能です。
また、ひとがモニター越しに見ている状態でも、ろっこんを普通に発動出来ます(事情を知らないひとの場合、そういう効果やイベントだと認識します)
※現実世界での行動も可能ですが、そこは普段の寝子島です。テオにより分断された寝子島へは行けません。
◇ミッション:謎の空間『Evergreen』のダンジョンを攻略し、助けを求めている存在を救出する
◆攻略に関して
・特殊アイテム
参加の意思があるキャラクターには、キャットアイランド内で使用出来るHUDというアイテムが配布されます。
今回のアイテムは装備する事によって、特殊エリアでアバターがRPGのようなステータス属性を持ち、戦う事が出来るようになります。
HPが0になっても、ホームに設定している地点に戻されるだけですので、負傷・死亡の心配はありません。
ダイブしている場合も身体能力などが設定されたステータスに変化するので、運動が苦手という方も心配ありません。
ひとやダイブしていない状態では、キーボードやコントローラーで操作する、大人数プレイのアクションRPGという感覚が近いです。
強力な技や魔法ほど、発動にチャージタイムが掛かるシステムなので、パーティを組んでの攻略をお勧めします。
現在はテスト段階で、クラス(職業)やスキルなどは雑多に詰め込まれている状態です。
(剣士や魔法使い、ヒーラーなど定番クラス以外にも、銃使いや超能力者のような近未来職、戦闘力は低いがパーティメンバーに特殊効果を与える軍師や吟遊詩人など、お好みで選んで下さい)
アイテムはデフォルトでは指輪型ですが、イヤリングや腕輪、ヘッドフォンなど装備部位毎に何種類か変化させる形状を選べ、中に装備を格納出来ます。
装備は今回、選んだクラスによって使えそうな武器が幾つか入っています(剣士なら剣や刺突系武器、魔法使いなら杖や本など)ので、こちらもキャラクターに合わせてお決め下さい。
・パーティについて
パーティ(PT)を組む方同士でGAをご利用下さい。人数制限は特にありません。
また、自我を持つマヌカノイドを1人入れておくと、メンバー全員のインターフェースに半径5~10m範囲の敵を察知するレーダー、敵のHPゲージなどが表示されるようになります。
マヌカノイドのクラスは固有の『アナライザー』となります。戦闘能力は皆無なので、敵の攻撃に晒されないよう気を付けてあげて下さい。
※壊れてしまった場合、復元後も自我や人格がそのままという保証は出来ないようです。
アーティ以外にも記念樹公園に何体か残っていますし、キャラクターさん所有の、自我を持つ条件を満たしたマヌカノイドと一緒に冒険する事も可能です。
「ソロだけどPTを組みたい」という場合、ご希望があれば他のソロの方と組ませて頂きます。
それでも人数が心許ない場合や、いやいやあえてモブNPCと組みたいという場合は、大穴の警戒に当たる理想学園有志(名無しのモブNPC)の中から何人かがメンバー入りします。
ただし、モブNPCの能力はキャラクターさんより若干低めです。
・モンスターについて
緑掛かった流体金属状の存在で、スライムのように彷徨っていますが、アバターやマヌカノイドを捕捉すると何らかの動物に似た姿に変形して襲ってきます。
変身する動物は、基本的に一個体に一種固定です。特殊な能力を持つ個体もいるようです。
(プレイヤー情報:もれいびに酷似した能力を使う固体もいます。ダイブしているもれいびは、自分のろっこんと同じような能力を持つモンスターと遭遇し易いようです。「どうしてこいつが俺の能力を!?」という反応や、その場での対処などを書いておくと良いかも知れません)
ランダムで無限に出現するタイプで奥に行くほど強くなりますが、ボスはいないようです。
NPC:直樹、神田ちゃん、Mystiqueが記念樹公園側でキャラクターさんのサポートを行います。
【分断】された寝子島サイド
◇ミッション:暴れ出した人形たちを沈静化させる
解決パターンは色々考えられますが、時間切れ(3~4時間経過して緑の小鳥が消滅)になってしまうと、複数の登場人物(NPC)が不幸になる結果に陥る可能性があります。
また、テオは緑の小鳥の影響さえなくなれば、真由美が暴走したままでも影響範囲小として、分断を解除する可能性がありますので、ご留意下さい。
※緑の小鳥が生き残った場合、最終的にどうするかは次回(最終話)に持ち越します。
※こちらのサイドでは、通常通りひとの前ではろっこんの不発や効果減退が起こり得ます。
◆人形・ぬいぐるみについて
浮遊して移動する事が可能です。
人形の行動は2パターンあり、三浦邸に集結して真由美を守護しているものと、道中で逸れて制御を失い、付近で動いたり声を出したりしている人を発見すると襲い掛かってくるものがいます。
行動や攻撃方法は、その姿によって特徴があります。
動物型の場合は、その動物に近い身体能力や性質を持ちます(猫なら俊敏など)
銃や武器などを持っている人形は、それらで攻撃してきます(銃弾は極小のプラスチック弾のようなものです)
ドールタイプの人形は、笑い声で精神攻撃してきたり、衝撃波のようなものを放ってきます。
どの人形も戦って倒すことは可能ですが、基本的に耐久力が低いので破損してしまう可能性が高いです。
人形の破損、周辺環境の損壊などは、隔離が解かれても元の世界に影響を及ぼします。
・前回ご参加のキャラクターさんの人形やぬいぐるみは、シナリオ開始時点では無事です。
・人形を傷付けずに無力化する方法もあるようです。
◆三浦邸について
桜台の住宅地にある、普通のお宅よりちょっと裕福そうな広い家です。
真由美は2階奥の部屋におり、要所要所に人形たちが待ち受けていると思われます。
なつめは離れた月極駐車場におり、この場所は人形たちが三浦邸に引き上げた為比較的安全と言えます。
他、巻き込まれている主なひとNPC:日暮 咲希(寝子高3年、DOG110メンバー)、早苗・リージュ(ドールショップの支店長)
※歌に関する情報は、ねこったー以外にもキャットロード裏にあるPCショップの兄ちゃんからも聞けます。