- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
時刻表で巡る旅 ――妄想編――
◆旅鴉 月詠 ～想像の翼を広げて～
夏休みでも、月詠の生活は さして変わらないと言っても過言ではない。
キャンバスと向き合う時間が、いつもより数時間、増えただけなのだから。
とは言え、ただアトリエに閉じこもっているのでは、一般的な人の感覚で言えば少し食傷気味になるような……そんな感覚に陥ってしまうものだ。
「そうだね、少し歩こうか」
お茶が入った水筒とスケッチブック、筆記具の類をまとめると、月詠は新しいインスピレーションを求めて、星ヶ丘寮内を散歩する事にした。
「やあ、やはり猫には坂が似あうね。今日も暑いから、歩く時は肉球に気をつけて？」
猫達と挨拶を交わしながら、月詠はエントランスにたどり着いた。
目に付くのは、南仏テイストの調度品や、窓から見える青と白に塗り分けられた眺望。
とても学生寮とは思えない、広々した空間。
初めての客人は、必ずと言っていいほど感嘆するものだが、月詠には見慣れた光景だ。
ガーネットの瞳を、軽く走らせる。
――どれもピンとこない、少なくとも今描きたいものではないな。
ラウンジで籐のソファに腰掛け、一息ついていると、サイドテーブルに置き去られた時刻表を見つけた。
数々の作品を生み出してきた、手を伸ばして、月詠はパラパラとそれを捲った。
「そう言えば鉄道好きは、時刻表を使って想像の旅を楽しむと聞いた事があるな。んー……」
ペンを取り出すと、月詠は電車の旅に思いを馳せた。
「のろのろとした運転ではあるが、海を見るには丁度いい速度だ」
寝子島を離れた ねこでんは、独特のリズムを刻んでいる。
本土まで、凡そ1キロ。電車は海の上を走る。
そうして電車は、本土に達した。
細いトンネルを抜けると、強い日差しに迎えられ、電車は鎌倉の住宅地の中を通り抜けていく。
シートに座った月詠ですら、手を伸ばせば届きそうな位置に、古都の町並みがあった。
流れていく緑の合間に、人々の生活の営みが今でも姿を変える事無く、息づいている。
「このへんは長閑で、古い日本の景色が残ってる感じだね」
古都と呼ばれるだけあると、月詠はひとりごちた。
やがて電車は、鎌倉へ到着した。
小腹も空いてくる時間、ホームの駅弁売り場で手ごろなお弁当を物色する。
「ふうん。海が近いだけあって、海産系が多いけど……定番だし、サンドイッチにしようかな」
せっかくだから成田エクスプレスの指定席で、ゆったりとサンドを摘みながら東京へ向かう。
車体の揺れを感知するシステムが搭載された車両は、静かで快適だ。
床の市松模様も、黒と赤のシートも和モダンを意識した風で、感性を刺激された。
「うん、こういうのもなかなか」
年若い彼女だが、アーティストとしての感性には、常に磨きをかけている。
古いまま残ったものも、変化し続けていくものも、月詠には好ましい。
いよいよ、日本の首都・東京。
急ぎ足でそれぞれのホームへ向かう人々に、くるくると瞳を動かす。
「ここまで来れば、あとは何処へでも行ける気がする。何処に行くかは迷うところだが……新幹線もよし、鈍行の旅もよし、このまま成田空港に行くもよし。でも……」
月詠はエクスプレスを降りて、東京駅へ降り立った。
「日本最大のダンジョン、新宿ラビリンスを彷徨うのも楽しいかな？」
本数も多い山手線へと、月詠は脚を向ける。
新宿駅は、今も拡大しているとか。どうなっているのか、楽しみだ。
ところが月詠は、パタンと時刻表を閉じた。
「ここまでかな。実際に行く時は、ちゃんと目的地を決めておかないと」
メモ帳に残ったのは、月詠の頭に浮んだもののイメージ。
隙間なく埋まった紙面を手に、月詠は自室でもあるアトリエ『魔女の座』へと戻った。
バケツに水を汲み、水彩画を描く準備を整えると、月詠は自由に筆を走らせた。
つけたラジオも、いつの間にか耳に入らなくなってくる。
鉛筆の淡い輪郭線が描き出した構図は、画用紙の上半分を鎌倉の景色、紫陽花や大仏など、誰もがイメージするものが覆う。
長谷の大仏を下から仰ぎ見れば、澄み渡った空が広がっている。
中央に配されたトンネルからは、ねこでんが今にもこちらへ飛び出しそう。
下半分には海側から見た、電車が走る風景。
豊かな自然や、神社仏閣だって忘れない。
軽く淡いタッチとは言え、これだけの書き込み、月詠の腕でも完成まではそれなりに時間がかかったが。
「ふふ、宣伝ポスターみたいになったな」
絵を立てかけてしばし眺め、月詠は満足そうに微笑んだ。
夏休みでも、月詠の生活は さして変わらないと言っても過言ではない。
キャンバスと向き合う時間が、いつもより数時間、増えただけなのだから。
とは言え、ただアトリエに閉じこもっているのでは、一般的な人の感覚で言えば少し食傷気味になるような……そんな感覚に陥ってしまうものだ。
「そうだね、少し歩こうか」
お茶が入った水筒とスケッチブック、筆記具の類をまとめると、月詠は新しいインスピレーションを求めて、星ヶ丘寮内を散歩する事にした。
「やあ、やはり猫には坂が似あうね。今日も暑いから、歩く時は肉球に気をつけて？」
猫達と挨拶を交わしながら、月詠はエントランスにたどり着いた。
目に付くのは、南仏テイストの調度品や、窓から見える青と白に塗り分けられた眺望。
とても学生寮とは思えない、広々した空間。
初めての客人は、必ずと言っていいほど感嘆するものだが、月詠には見慣れた光景だ。
ガーネットの瞳を、軽く走らせる。
――どれもピンとこない、少なくとも今描きたいものではないな。
ラウンジで籐のソファに腰掛け、一息ついていると、サイドテーブルに置き去られた時刻表を見つけた。
数々の作品を生み出してきた、手を伸ばして、月詠はパラパラとそれを捲った。
「そう言えば鉄道好きは、時刻表を使って想像の旅を楽しむと聞いた事があるな。んー……」
ペンを取り出すと、月詠は電車の旅に思いを馳せた。
「のろのろとした運転ではあるが、海を見るには丁度いい速度だ」
寝子島を離れた ねこでんは、独特のリズムを刻んでいる。
本土まで、凡そ1キロ。電車は海の上を走る。
そうして電車は、本土に達した。
細いトンネルを抜けると、強い日差しに迎えられ、電車は鎌倉の住宅地の中を通り抜けていく。
シートに座った月詠ですら、手を伸ばせば届きそうな位置に、古都の町並みがあった。
流れていく緑の合間に、人々の生活の営みが今でも姿を変える事無く、息づいている。
「このへんは長閑で、古い日本の景色が残ってる感じだね」
古都と呼ばれるだけあると、月詠はひとりごちた。
やがて電車は、鎌倉へ到着した。
小腹も空いてくる時間、ホームの駅弁売り場で手ごろなお弁当を物色する。
「ふうん。海が近いだけあって、海産系が多いけど……定番だし、サンドイッチにしようかな」
せっかくだから成田エクスプレスの指定席で、ゆったりとサンドを摘みながら東京へ向かう。
車体の揺れを感知するシステムが搭載された車両は、静かで快適だ。
床の市松模様も、黒と赤のシートも和モダンを意識した風で、感性を刺激された。
「うん、こういうのもなかなか」
年若い彼女だが、アーティストとしての感性には、常に磨きをかけている。
古いまま残ったものも、変化し続けていくものも、月詠には好ましい。
いよいよ、日本の首都・東京。
急ぎ足でそれぞれのホームへ向かう人々に、くるくると瞳を動かす。
「ここまで来れば、あとは何処へでも行ける気がする。何処に行くかは迷うところだが……新幹線もよし、鈍行の旅もよし、このまま成田空港に行くもよし。でも……」
月詠はエクスプレスを降りて、東京駅へ降り立った。
「日本最大のダンジョン、新宿ラビリンスを彷徨うのも楽しいかな？」
本数も多い山手線へと、月詠は脚を向ける。
新宿駅は、今も拡大しているとか。どうなっているのか、楽しみだ。
ところが月詠は、パタンと時刻表を閉じた。
「ここまでかな。実際に行く時は、ちゃんと目的地を決めておかないと」
メモ帳に残ったのは、月詠の頭に浮んだもののイメージ。
隙間なく埋まった紙面を手に、月詠は自室でもあるアトリエ『魔女の座』へと戻った。
バケツに水を汲み、水彩画を描く準備を整えると、月詠は自由に筆を走らせた。
つけたラジオも、いつの間にか耳に入らなくなってくる。
鉛筆の淡い輪郭線が描き出した構図は、画用紙の上半分を鎌倉の景色、紫陽花や大仏など、誰もがイメージするものが覆う。
長谷の大仏を下から仰ぎ見れば、澄み渡った空が広がっている。
中央に配されたトンネルからは、ねこでんが今にもこちらへ飛び出しそう。
下半分には海側から見た、電車が走る風景。
豊かな自然や、神社仏閣だって忘れない。
軽く淡いタッチとは言え、これだけの書き込み、月詠の腕でも完成まではそれなりに時間がかかったが。
「ふふ、宣伝ポスターみたいになったな」
絵を立てかけてしばし眺め、月詠は満足そうに微笑んだ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2014年04月21日
- 参加申し込みの期限
-
- 2014年04月28日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2014年04月28日 11時00分
