人生模擬演習遊戯『一生ゲーム』｜リアクション

人生模擬演習遊戯『一生ゲーム』

●１６年目

５月
【撫子の咲く頃】
『祝福！』
　戌井創と鬼崎のばらの間に第一子が生まれる。
　のばらと伯母の牡丹によく似た可愛らしい女の子。
　名前は誕生花にちなんで鬼崎撫子と名付けられた。

６月
【自由】
　皐月は大金持ちと結婚もして、子どもも産んで――けれど皐月は基本的に自由だった。
　子育てはお手伝いさんたちがほとんどしてくれるし、家事も好きな範囲でやってあとは任せればいい。
　遊びに行くのも自由に許されていた。出掛けるのが億劫ならば名ばかりの趣味の映画を見るためのシアタールームもある。
　皐月は恵まれていた。
　それは自覚している。
　だから――服を脱ぐ。綺羅びやかなアクセサリーなんていらない。シャツもレースのカーディガンもいらない。
　下着姿になって、ようやく皐月は動きを止めた。
　誰もいないだだっ広い部屋にひとり、下着姿の皐月。
「……ふふ、くくく……あはははは」
　声を上げて笑い、ふらふらと部屋の中をさまよった。
　ふと、鏡が目につく。
　見上げて映るのは、完璧な皐月。
　綺麗で頭が良くて愛想が良くて愛されていてお金もあって趣味も良くて友達もいて優秀で可愛らしい子どもたちがいて――なんだってある。皐月にはなんだって。

　でも、それは自分が望んだ自分？

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　自分が望んだことって、なんだっけ？

　こんなに満たされているはずなのに、なんでこんなに空っぽなんだろう？

あれ、おかしいな……。どうしてこうなっちゃったんだろう？

　皐月は、
　皐月は。
　皐月は？

「あははははは、ははは、ふふふ」
　皐月はとっても幸せ。
　わたくし、あたくし、アハハハハハハハハハハハハハ。
　笑ってるよ。ほら。
　笑ってるってことは、幸せってことだよ？
　だからもっと笑いましょう。あははじゃｊｆ＠どふぁｊが＠ｄ4

８月
【夏だ】
『受験生の場合』
　受験生には夏はない！
　嘉島和穂は高校デビューするために、必死になって勉強した。
　勉強して、勉強して――「一緒に勉強しよ♪」「一緒に帰ろうか」みたいなノリでカップルが増えていくのも知らず、身を粉にして勉強し続けた。

１１月
【ひとつの形】
「結婚しないか」
　いつもの軽いノリで九条翔は常闇月に言い放った。
　だから、月も軽い調子で頷いてみせたのだった――

１７年目に進みます。
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