【決戦は星ヶ丘マリーナ！・１】

　悲鳴を聞きつけた橘と御剣。
　星ヶ丘マリーナの波止場に、複数の男女がたむろしているのを発見した。
「大丈夫か！？　今助けるぞ！」
「刀君、急ぐわよ！」
　２人は急いで駆け寄った。
　だが、そこで繰り広げられているのは、とてつもないカオスだった。

　まず、一糸纏わぬミス・マゾッホ（忍足 春）が、こちらも生まれたままの姿の男女島 太助によって踏み付けられていた。
「も、もっと蔑みの目で私を見てください！　どうか私を踏んづけてください～！」
　恍惚の表情で目を泳がせるミス・マゾッホ。
　それに男女島は生真面目に答えた。
「かしこまりました！　それでは、もっと貴女様をゴミのように足蹴にさせていただきます！　Present for you　LuckySUKEBE！」
　するとグリグリとミス・マゾッホのお腹を足の裏で容赦なく押し潰し始める。
　胃の中の空気が漏れ、彼女の口からヒューヒューと呼吸音が大きくなっていく。
「アハァン！　そうです、私は踏まれて喜ぶ、卑しい女なんですぅ！　足蹴にするだけじゃなく、拘束して、殴って、首を絞めたり……うふふ！　と、とにかく！　めちゃくちゃに壊してくださいぃ！　私、悪い子だから、もっとお仕置きして下さいぃぃ！　ハァハァ……！」
　心なしか舌を出して痙攣し始めているマゾッホの注文を忠実にこなそうとする男女島。
　彼の筋肉質の臀部に、もうひとりの変態淑女が頬擦りをしていた。
「ぐえへへへへ！　雄尻触りたいホーダイ、揉みホーダイ！　すごい、そらりん、夢見てるのかなっ？」
　変態魔法少女そらりん（桃原 空音）が堂々と男女島の尻に顔面を擦り付けているのだった。
　しかし、男女島は誇らしげにそらりんに告げる。
「臀部を揉みしだきたい！　そんな貴女様に！　Present for you　LuckySUKEBE！」
　自ら引き締まった尻を差し出し、そらりんの性的欲求を満たそうとしているのだ。
　なんという間違ったベクトルの奉仕精神なんだろうか！
「そうだ☆　ねぇねぇ、裸の執事さん！　そらりん、お願いがあるの☆」
「はい、なんなりとお申し付け下さいませ、そらりん様！」
「あのねぇ？　じゃんじゃじゃーん♪　『ミラクル☆ペン』☆」
　そらりんは極太の黒マジックペンを懐から取り出した。
「そのペンをどうするのですか？」
　男女島の質問に、そらりんは行動で示す。
「え？　どうするかだって？　こ　う　す　る　ん　だ　よ　☆」
　そらりんは男女島の尻へと黒マジックペンを突き立てる！
「そらりんのとっておきミラクルを体感させてあげるよ☆　……ってあれ？」
　黒マジックペンは大殿筋の隙間に挟まって、本丸まで突き刺さることはなかった。
　真剣白刃取り状態だ！
　男女島は微笑んだ。
「なるほど！　私の鍛え抜かれた大殿筋の性能を確かめたいのですね！　かしこまりました！」
　ふんっと男女島が力を込めると、なんと、マジックペンのキャップが粉々に粉砕された！
　海外の大道芸人には尻で挟んだクルミを割る人もいるらしいので、決してキャップ破壊も不可能ではないのだ！
「どうでしょうか！　満　足　頂　け　ま　し　た　で　し　ょ　う　か　！」
「「大満足です！」」
　PEC女性隊員、全裸紳士に欲望を満たされてK.O.されてしまった。

　別の場所では、男装した恵御納 夏朝（今は別人格の夏夜）と海原 茂の両名が、四足高速移動する納 利悟（全裸）に襲われている御巫 時子と雪原 真白の前に立ちはだかっていた。
「ようやく追い詰めたと思ったら、なんだこの状況！」
　夏夜は思わず舌打ちをした。
　納を追跡していた彼女は、途中で濡れ衣を着せられている海原と偶然出会う。
　そして彼を探していた御巫と雪原も合流し、海原の濡れ衣の経緯を聞いていた最中に、納が民家の屋根から飛び降りてきた。
　幼女への渇望で悲しきモンスターに成り果てた納のセクハラ攻撃は、御巫を「やめて……下さい……！」と羞恥心で顔を朱に染めさせ、雪原に「ひゃあっ！　そんなとこ手を突っ込まないでよ～！」とパニックにさせる。
　ついでに海原も「なんで男物までかぶりつく！？」と、納はパンツならなんでもいい状態になっていた。
「よぉぉぉぉじょぉぉぉぉぉ！　どうして６月からなんじゃあああぁぁぁぁ！」
「このお爺さんは、何を言っているんだ！？」
　海原が恐怖で体を震わせる。
「……幼女幼女ってうるさいな！」
　夏夜は缶ジュース数本が入った袋を振り回し始めた。
「雪原さんはキャミソールに軽やかな超ミニスカで生脚足ミュール姿な開放的な感じだからって、スカートの中に顔を突っ込むのは良くないし、御巫さんにベタベタ触るのも止めろ！」
「夏夜さん……、実は、私、今日……、パンティー履き忘れてしまって……」
「「えっ！？」」
　夏夜と海原、そして納は声を揃えた。
「私……、普段は和装が多いので……、ブラジャーやパンティーは……時々付けないので……」
　衝撃の事実。
　御巫さんは時々、穿いていない子だった。
「ロリではないが……、お嬢ちゃん、後生じゃ！　この老い先短いワシに、お嬢ちゃんの●●●を見せてくれんかのぅ！？」
「いい加減にしろー！」
　夏夜が袋入り缶ジュースを振りかぶった。
　同時に、どこからか「幼女最高ォッ！」という叫び声が耳に入る。
　ドグシャァッと固形物が潰れる音が響く。
　彼女が簡易缶ジュースハンマーを振り下ろした先に、納の姿は見当たらなかった。
　潰れた缶だけがそこにあった。
「！？　どこに行った？」
「あそこだ！」
　海原が波止場の防波堤を指差した。
「師匠！　間一髪でしたね！」
　龍神（冴木 竜司）、師匠の危機を救うべく推参！
「うおおお！　●●●は俺も見たいんだぜー！！」
　龍神の性欲溢れる雄叫びにより、彼のろっこん『性春パワー！』が発動されるのだ。
　彼は師匠を救うべく、ろっこんで筋力増加を行っていた。
　これによって老人１人を抱き抱えながら全力疾走が可能になった。
「逃げられたか……！」
　海原が走り去る龍神の背を見送る。
　だが、遠くで龍神の「どいひーっ！」という断末魔が聞こえてくる。
「誰かが成敗してくれたようだね……」
　４人はその場にへたりこんでしまった。
「そういえば……、結局、茂さんは……、どうして濡れ衣に……？」
　御巫の疑問に、海原が嘆息を吐きながら答えてくれた。
「たまたま受験勉強の気晴らしにと、星ヶ丘寮の近くを散歩していたら、あの老人が寮内に侵入してパンツを盗んで食っているのを見掛けたんだ。俺は取り押さえようと格闘していたら、星ヶ丘寮のスタッフに勘違いされてな……。俺もあの変態老人を追って、無罪を晴らしたかったんだ。３人とも、感謝する」
「生徒会長、不憫だねぇ……」
　雪原は苦笑いしかできない。
「ただ、１つ気掛かりな事がある」
　海原は額を抑えながら言葉を漏らす。
「あの老人が奪った７枚のカラフルなパンツを、ビキニパンツ一丁の筋肉怪人が横取りして行ったんだ。そいつを捕まえないと、俺の無実は完全に証明できないかもしれない……！」
　３人は顔を見合わせてしまった。