【決戦は星ヶ丘マリーナ！・３】

　御剣と橘は目の前のカオスの対応に困っていた。
　合流した八神と邪衣も、この状況に閉口してしまう。
「どこから手を付けようか……」
　八神が遠い目をしていると、邪衣がそらりんの頭をアイアンクローし始めた。
「まず１人、だな」
　メリメリと音を立てて食い込んでいく彼の指に、そらりん大ピンチだ！
　と、そこへ更に女性２人とPEC２人が波止場に辿り着く。
「い、いやぁ……！　小淋さん、助けて……！」
　着衣が乱れた哀坂 零葉が首を振って親友に助けを求める。
「こ、来ないで下さい……！」
　辛うじてホットパンツだけは死守する北条 冬華が涙ぐむ。
「なんで僕まで！　変態はあっちいってよ！」
　上穗木 千鶴もけしからん胸元をぶるぶるんと震わす。
　PEC隊長と紙袋さんは、到着するや否や波止場に集まる被害者女子たちにセクハラをしだした！
　御巫 時子は自身が所有するレインボーパンツを奪われた上に、執拗なボディタッチに必死に身を縮めて耐えていた。
　逃げ回る雪原 真白は逃げている最中にろっこんの瞬間移動が再び発動してしまった。
　お陰で、彼女は全裸を衆人の目に晒してしまう。
　当然、その柔肌は真っ先に変態どもに狙われ、PEC隊長と紙袋さんが紳士的に揉み漁るのだった。
　追い掛けてきた横嶋 下心の手には、彼女たちのブラとパンツが！
「飼い主さん！　グッジョブ！」
　横嶋はメイソン・ブリッジスにサムズアップ。
　メイソンの飼い犬が女子たちにじゃれ付き、下着を見事に強奪したあと、それらは横嶋たちの手に渡っていたのだ。
「待てよ、俺だって止めてるのに、うわあ！　ジョニィ、いい加減にしろ！」
　メイソンは飼い犬に引っ張られ、ミス・マゾッホの裸体に主従共々ダイブしていった。
　マゾッホは乱入者に体中を押し潰されたり噛まれたりして喜んでいる！
「ファファファファ……！　我が最高のデコレーションを施してやろう！」
　紙袋さん（初島 優）が片栗粉を水筒の水で溶き、不思議な踊りをしながらシェイク！
「フォウ☆　フォウ☆」
　紙袋さんはフィーバーしている！
「そして喰らえ！　白☆濁スプラッシュ！」
　水溶き片栗粉が女子たちに振り掛けられる！
「「きゃあ！」」
　乙女の柔肌に、とろみのついた水溶き片栗粉がまとわりつく。
　絵的に非常に危険だが、片栗粉だからセーフだ！
「うおっと！　手元が！」
　勢い余って紙袋さんは、アイアンクローから逃げ出したそらりんにまでぶっかけてしまう。
「紙袋さんー！？　やだ、ぬるぬるだよぉ！　あっダメダメ！　お面がぬるぬるで取れちゃう、絶対らめぇ！」
　必死にお面をガードするそらりん。
　ちなみに正体はほぼバレバレである。
「ファファファファ！　これぞ芸術！　白濁汁まみれの女性……！　ああ、なんとエロい光景か…！」
「ナイスだ、紙袋さん！　よーし！　俺も隠された女性の神秘や剥き出しのおっぱいを見て揉んで触って頬ずりしてペロペロ的な事やそれ以上の事をやっちゃうよ！　紳士的に！」
　パンツを被った横嶋がヌルヌルの女子たちに向かってダイブし、押し合いへし合いを行い始めた！
　雪原の乳を揉み、北条の胸元に顔を押し付け、哀坂の尻を撫で、上穗木の魔乳に身体を摺り寄せ、御巫の太ももに頬擦りを敢行！
　横嶋隊長のエロ無双に、PEC団員から歓声が上がる！
「「さすが隊長!!」」
　ただ、トロトロの液まみれの乙女達が絡み合う様は、健全な男子たちには刺激が強いようだ。
　男たちの思考回路が停止してしまう。
　だが、この男たちは違った。
「この御法度野郎共！」
「生徒会長をなめるな……」
　御剣＆海原のムッツリーズが反撃を開始！
「俺もいるよ！　レディのピンチを救うのは紳士の義務さ！」
　八十八旗 信彦も助太刀だ！
「いやぁ、まさか！　あっちにレインボーパンツがあるよって変態どもに嘘吐いたら、本当に七色のパンツを被ったオカマが現れるなんてね！　ラッキーだね！」
「「えっ？」」
　八十八旗の言葉にムッツリーズは足を止める。
　波止場には、尾鎌 蛇那伊が７枚のパンツを被って暴走しているじゃないか。
「ぶるあァァァァァァァ！」
「ちくしょう、あれが元凶ってわけか！」
　御剣は横嶋たちの目の前で急旋回をし、尾鎌を捕らえようとする。
　しかし、水溶き片栗粉に足を取られてしまう。
　更に慣れない跳び蹴りを繰り出そうとしたため、盛大に大転倒！
　傍にいた橘を巻き込んでしまう！
「痛ッ？　まずい、足を捻ったか！　って、なんだこれ？」
　御剣の右手に、純白の逆三角形の布が収まっていた。
　そして左手には柔らかい感触と温もりをキャッチしている。
「すごく見覚えあるぞ、これ！　って、まさか、千歳！？」
　覚悟と期待を込めて御剣が顔を上げると、そこには絶景が広がっていた。。
　橘のスカートが完全にめくれ上がり、尚且つもみくちゃになった御剣の手が彼女の腰元と胸元に引っ掛かっていたのだ。
　なんという不幸と幸運！
　これは上穗木のろっこん『神様ゲーム』の効果による、幸運と不幸！
　プラス、御剣の持ち合わせている女難の星巡り！
「つまり、今回は俺、セーフってこと？」
　八十八旗は小さくガッツポーズ。
　彼女のろっこんは、１日１名限定なのだ。
「う、うに～？　ピンクの人より変態がいるに！　って、背後から覚悟だにー！」
　七音 侑が横嶋の背後から不意打ちをかまし、横嶋をボカスカ殴りまくる。
「くぅ、我だけでも逃げ果せる！　ホワイト・スパイス！」
　紙袋さんが小麦粉袋を撒き散らそうとしたその時だった。
「海に落ちて反省しやがれ！」
　水着姿の奈良橋が滑空しながら、本物のトンビのように紙袋さんの体を空中へ引っ張り上げた！
　そのまま紙袋さんを海の中へどぼんと落下させると、彼女は舌打ちをした。
「しまった、崖の上に吊るすのに、海に突き落としたら駄目じゃないか！」
　……海へ落とされてよかったね！
「あ～！　下心ちゃん、そのヅラとパンツを返すのだー！」
　後木 真央がタコ殴りされている横嶋から、笠原先生の七色カツラとラメビキニパンツを奪取。
　横嶋は「パンツを配ってるなら受け取るしかないよね！」と自分の正当性を主張するが、被害者たちに更にボコられるのだった。
「良かったのだこれで一安心なのだ！　あとは穿いていない人は褌付けるのだ！」
　後木の褌推進魂に火が付いてしまった。

　暴走した尾鎌へ向かう八神と邪衣。
　取り押さえようと迫るが、尾鎌の繰り出す妙な拳法のせいで手を出せない。
「あれは、まさか？」
「知ってるのかい？　ヒロミちゃん！」
　八十八旗が奈良橋に尋ねた。
　彼女は額に汗を溜めながら解説しだした。
「あれは秘された流派『色業拳（しきごうけん）』！　衣服を切り裂いたり、快感の経絡のツボを突く暗黒拳だ！」
「ナニー！？　あれを食らったら、やがみんのような堅物キャラも路線変更を余儀なくされるじゃないか！」
　八十八旗が目を剥いて驚く！
「剥いて良いのは剥かれる覚悟の有る奴だけだ」
　既に攻撃を受けて半裸の八神はクールに言った。
　相手は全裸だけど！
「尾鎌の被っているパンティの生み出した混乱と悲劇を見ろ。これは人の業、七つの大罪の１つ『色欲』だ。まだ分からないのか？　あの七色パンティの持ち主はセブン、つまり芽森 菜々緒だ！」
　こんな状況でも八神の推理は冴え渡っていた。
　その後、奈良橋の加勢や邪衣のジャーマンスープレックス、八十八旗の見守りにより、無事に菜々緒のパンツも取り戻すことができた。
　ひん剥かれてパンツ一丁になっても、八神はイケメンだった。

　そして、今回のオチ。
「……バーカーターナー？」
　橘は立ち上がると、背後に閻魔王の幻像を浮かび上がらせる。
　そこへタイミング悪くやってくるワリタリーヌと菜々緒。
「ドーモ、ワリタリーヌ・ゴールドナッツ・パックリーです。チャイコフスキーは言った、マドカは死んだと。この戦いが始まった時に、ボクの覚悟と共にね」
　これに続いて菜々緒が挨拶した。
「ドーモ、ニコール・ターマ・スカットキルです。ハジメマシテ。一部始終を見ていたわ」
「何をスカッと切るんだよ、こえーよ！　てか桜庭またか！　それに……女王、お前もか。お前ら、同じオーラが出てるんだが……。頼むからこれ以上、男の股間を潰すのはやめろよ？　あれ洒落にならねぇほど痛いんだからな！」
　だが、御剣の言葉は２人に届かない。
「桜庭さん……、私、今ならあなたの気持ちが分かるわ」
　橘が悟った表情を浮かべる。
「守るって言ってくれたから信じたのに、見損なったわ、刀君。ふつふつと体の奥から沸き起こる黒い感情。これが、これと同じものが今の桜庭さん、あなたを突き動かしていたのね」
　そういうと、橘は竹刀を御剣に向けて挨拶した。
「ドーモ、バカタナ＝サン。フンサイダー・ボールポール・ボキットです。千歳？　ああ、その子なら今死んだわ！」
　フンサイダーは竹刀に『エロ・即・滅』の正義のパワーを竹刀に注ぎ込む。
「おい、千歳？　待て待て、話し合おう！　話せば分かる！　平和的に――」
「死ねぇ！　バカタナァー！」
　フンサイダーのろっこん『正義一直線』の衝撃波が、波止場の変態たちを根こそぎぶっ飛ばしていく。
　御剣は海に墜落するまでの数秒間、無意識に菜々緒を見詰めていた。
（女王、俺はまだお前をナナオとは呼べない……頭が痛い……）
　御剣は『女王』への罪悪感を意識する。
　だがすぐに海面に頭から突入し、溺れてそれどころではなくなってしまった。