プリントヘルin寝子島高校｜リアクション

プリントヘルin寝子島高校

「それより先にトナー引っこ抜くのだ！！　ソーター付業務コピー機は１２０万近いから破壊は最終手段にしておくのだ！」
　真央が鼻息荒く付け加えれば八神修がどうどうと諌める。そうしながら浮んだのは、この暴走の理由。
（もしかしたら、疲れていたのか？）
なんて考え、難関大学の入試問題集を懐からだした。
「……何をするつもりなんだ？」
「いや、これを印刷してみたら収まるかもしれないと思って」
　刀の問い掛けにさり気なく答えつつ、修は印刷室へ入ろうとする。けれども、紙が邪魔でなかなか進めない。
「だったら、盾が必要じゃない？」
　圭花が何気なく言う。が、周りの物はピンと来ないらしく首を傾げる。が、修だけは違った。
「成る程……？」
「私だったら、直ぐに用意できるわ」
　彼女は不敵に微笑むと眼鏡を外し、印刷室のドアへと歩み寄った。そして徐に留め金などを外してしまう。圭花のろっこん『ガレージランド』は『眼鏡を外す』事で『ネジやジョイント等を素手で外し、機会や道具を分解できる』という物なのだ。
　これにより盾を得た修は、彼女の力を借りて印刷機の１つへと接近する。そして問題集の中身を印刷する所までこぎつけた。
「勉強の事ばかり印字してたから、ハメを外したくなったのかな。でも、もうそろそろいいんじゃないか？」
　そんな事を言いながら操作する。と……、印刷機はぴたり、と紙を吐き出すのを止めた。
「「おお～！！」」
　歓声が上がる印刷室。しかし、普通にコピーしたかと思うと……勢いよく再びプリントを吐き出し始めたではないか！　しかも今度は修が持ってきた問題集の問題も混じっている！
「こ、これはどう言う事なのだーっ？！　難しいはずの問題がわかるのだー！！」
　真央が思わず拾い、声を上げる。同時にどこで拾ったのか鉛筆でかりかりと勉強をし始めたではないか！
「数学の問題が理解できるなんて……？　これってなんか上の学年の問題っぽいのに？」
　飛んできたプリントを手にしてしまった圭花もまた困惑気味に言い、とりあえず一旦修共々下がる事に。……なんだか、修が持っていた問題集だけあって、以下の効果が添付されたようだ。

・難関大学の入試問題
　触ると勉強したくなる。しかもなんだかすらすら解けてしまう。

「なんでだーっ！！」
　修は思わず頭を抱え、刀はぽん、と励ますように肩を叩いた。
（愕然とする部長を優しく慰める御剣さん……ありですっ！！）
そして、そんな姿にも何故か未だ少女マンガのプリントを持ったままの美咲紀が「きゃー！？」と黄色い声を上げたのは……神魂の所為なのだろうか……。

「大体解った。神魂の所為で印刷機が暴走しているようだが……、その他のプリントは印刷機に残ったデータだろうな」
　突然の声に皆が驚いていると、声の主である月詠はちらりと印刷機を見た。いつの間にかココへ来ていたらしい。伸幸が不思議そうに見ながらへにゃ、と声を掛けた。
「うーん、どうしたら止まると思う？」
「そうだな、キャンセルを押すか電源を抜く、もしくは紙がつまるようにする等で一度印刷を停止させた方がいいだろう。その上でデータクリアしてしおりのデータを入れなおす……か」
　あとは別の印刷機を探す手もある、と付け加える。月詠の言葉に頷きながら伸幸は小さく溜め息を付く。
「それにしても、印刷機に近寄るには紙をどうにかしないとねぇ～」
　彼は意を決してプリントを回避しつつ掃除用具入れへと接近した。紙で圧迫されてなかなか開かなかったが、どうにか開けて綺麗なちりとりを取り出す。そして折れ曲がらないよう気を付けながら廊下へとリリース。
（プリントを曲げないように触らないように丁寧に、なのよ～）
　慎重に動きつつプリントを掻き出し、どうにか道を作る。けれどもプリントは切り無く出続け、少し遠い目になった。