サンマガチャ、ガチャガチャ｜リアクション

サンマガチャ、ガチャガチャ

●メイド喫茶にサンマさんが？

　メイド喫茶『ねこのて』でモーニングの準備を済ませた桧垣万里は、ご主人様（『ねこのて』ではお客様をこう呼ぶ）を気持ち良くお迎えすべく、店内の清掃を念入りにしている。
　店内清掃が終わると、店の前を清掃を。
　その時、店の前を通りがかった子供達が、楽しそうにサンマさんガチャの話をしているのを耳にした。
「この近くの店のおばちゃんから、この辺りでソフトクリームっぽいサンマさんのおもちゃ見たって聞いたんだけど」
「それ、今日の新作発売のガチャかな？」
「わかんない。ソフトクリームっぽい玩具としか言ってなかったから」
「それ、ソフトクリームサンマさんかもしれないね」
「マジ！？　見つけたら欲しい！　タダでソフトクリームサンマさんゲットできるじゃん！」
「見つけたら、拾って、ちゃんとホビーショップに返さないと駄目だよ」
　そんな会話をしながら、子供達はサンマさんガチャを買いに【ZePet】に元気良く走って行った。

「ソフトクリームサンマさん、とやらが、このお店にあるかもしれないらしいのですね」
　逃げ出したソフトクリームサンマさんが『ねこのて』にあるかとしれないと思った万里は、ねこったーを確認して情報をチェック。

　【拡散希望】【応援求む】キャットロード内の【ZePet】サンマさんガチャを探せ！【神魂！】

「さきほどのお坊ちゃま達のお話は、このことでしょうか？　今日発売のガチャガチャが、神魂で逃げ出したとなると探すのは苦労しますね」
　ガチャガチャを心待ちにしているお坊ちゃま、お嬢様達、ご主人様方のためにも、【Ze Pet】開店前に見つけてさしあげなければ！
　メイド服を着ている間は、家事をそつなくこなすメイドの鑑な万里。
　メイド喫茶『ねこのて』で粗相があってはいけません！　と、サンマさん探しを手伝うことに。
　というが、彼女は店長代理として忙しいし、ソフトクリームサンマさんが何か知らない。
「これがソフトクリームサンマさんですか。全身をソフトクリームに突っ込んだ、という感じですね」
　検索して見つけたソフトクリームサンマさんガチャの映像を見て、どのようなものかしっかり覚える。
　抱っこしている『ねこのて』店長の黒猫の橘さんにも見せたのは、手伝ってほしいからだ。
「橘さん、サンマさん探し、お手伝いしてくださいね？」
　両手を合わせ、万里は橘さんに頭を下げてお願いする。

　ソフトクリームサンマさんを探しつつ、来店するご主人様の対応をする万里は、いつも以上に忙しかった。
「万里ちゃんセンパイ、おはようございますなのだ～！　真央ちゃん、モーニング食べに来たのだ～！」
　後木真央は『ねこのて』でアルバイトをしているが、部活などの都合で、シフトは夜に入れている。
　朝の『ねこのて』に興味津々なこともあり、モーニングを口実に、初めて朝の『ねこのて』に。
　開店したてということもあり、ご主人様、お嬢様は少ない。
「おはようございます、真央さん。あ、お嬢様、とお呼びしなければいけませんね」
「真央ちゃんでいいのだ。モーニングひとつ、お願いするのだ。ドリンクはオレンジジュースなのだ」
「かしこまりました。こちらの席にどうぞ」
「ありがとうなのだ！」
　案内された席に座り「早くモーニング食べたいのだ～♪」と待つ真央は、何かが足の上に当たった気がした。
「何なのだ？」
　足元を見るが、何も見当たらず。
　何かがテーブルの下に落ちているかもしれないと、潜り込んで探すが何もなかった。
「気のせいなのだ」
　探すのをやめた時、万里がモーニングを運んできてくれた。
「お待たせ致しました。『ねこのて』モーニングでございます。ごゆっくりお召し上がりください」
「待ってましたなのだー！」
　お待ちかねのモーニングは、ドリンクとフレンチトースト、オムレツのセット。
　手を合わせ「いただきますなのだ！」と元気よく挨拶し、焼き立てトーストを頬張る。
「んー、おいしいのだー！」
　モーニングにご満悦な真央は、足元に当たった何かの存在をすっかり忘れていた。

　それがソフトクリームサンマさんであることがわかるのは、食べ終えてから、だいぶ経ってからであった。