サンマガチャ、ガチャガチャ｜リアクション

サンマガチャ、ガチャガチャ

●【Ze Pet】開店前

「まだお店が開いていませんわね」
「財前先輩、気が早すぎアル。まだ開いていなくて当然アルネ」
　開店１時間前なので、畑中華菜子の言うことはごもっとも。
　そんなことわかっていますわ、と心の中でぼやく財前華蓮は、華菜子と一緒に【Ze Pet】開店を待つ。
　華蓮がここに来たのは、サプライズで八重崎五郎八の仕事ぶりを見るためだ。
（サプライズでなければ、八重崎さんの仕事ぶりをニヤニヤして見ることができませんわ。知られたら、まずいですもの）
「畑中さん、あの列はなんなんですの？」
　開店前の【Ze Pet】前には、子供達が並んでいる。中には自分達と同年代、それ以上の大きなお友達も。
「並んでいるお客さんに、何があるのか聞いてくるアル。財前先輩はどうするアル？」
「待っていても退屈ですから一緒に行きますわ」
　並んでいる男の子に話しを聞くと、今日発売のサンマさんガチャを買いに来たのだという。
「サンマさんガチャ？　なんですの、それ？」
「知らないの？　ガチャガチャのおもちゃだよ」
「玩具を買うために並んでいますの！？」
　最初は驚いたが、子供達が並んでまで欲しい玩具がどのようなものか、華蓮は少し興味が沸いた。
（楽しみがひとつ増えましたわ。今日は退屈しないで済みそうですわ）

　ニャンプラで戦うアニメ『ニャンダムプラモファイターズ』に登場するウインドニャンダムポエニクスが再入荷されると聞いた初島優は、サンマさんガチャを買う列の中にいた。
　並んでいる子供達は、自分同様、ニャンプラを買いに来たものと思っている。
「サンマさん行進曲の新作、どんなものがあるかの楽しみだねー」
「新作にも、シークレットはあるんだよね？」
「毎回あるんだから、今回もあるよ」
　その会話から、ここにいる子供達は『サンマさん行進曲』シリーズの新作目当てだと知った。
「他のお客さんは、サンマさんガチャ買いに来たんだねー」
　このまま並んでいてもニャンダムプラモは買えると、のんびり開店を待つ優だった。

　並んで待つ子供達の様子を窺いながら、五郎八は店内で龍目豪に電話をかけ、新作サンマさんガチャ探しを手伝ってほしいと頼んでいた。
「……ということなんだが、手伝ってくれないかな？」
「わかった。並んで待っている子供達をがっかりさせたくないしな。今すぐ行く！」
「ありがとう」
　探険部部長の豪としては、この頼み事は、探検部で鍛えた目や注意力を活かすチャンスだ。
「サンマさん探しか。探検部で鍛えた技術、思う存分活かして、全部見つけ出すぜ！」

（店員のお姉さんとしては、少し助けがあると助かるところかなぁ）
　周囲をチラ見して、常連さんや親しい人がいたらサンマさんガチャ探しを手伝ってもらおうかと考える五郎八だったが、さすがに誰も彼も、というわけにはいかない。
　豪との電話連絡を終え、どうしようと考え込んでいる五郎八を見かけた宇佐見望月は、困っている雰囲気を察し、五郎八にどうした？　と訊ねた。
（開店しなかったら、ニャンダムライデンボルトのプラモが買えないじゃねえか！）
　そう言いたかったが、その思いは胸の内に。
「ういーっす、五郎八ちゃん。……どったの、そんな困った顔して？」
「宇佐見君か。実はね……」
　並んでいる子供達に聞かれるとまずいので、耳打ちでサンマさんガチャの一件を話した。
「は？　ガチャの中身が逃げたぁ？！」
「声が大きい！」
「……っとゴメン、でっけー声出し過ぎた」
　その声を聞き、店の様子がおかしいことを感づいた優は、列から離れ、ふたりのところへ。
「何かあったんですかー？」
「お客さんか。店で、こういうことがあって……」
　望月が説明するしようとするのを遮り、五郎八が事情を説明。
「サンマさん行進曲シリーズの新作が逃げ出したー？　神魂ってホント何にでも宿るなー」
「本当に困ったものだよ。開店まで時間が無いのに……」
「八重崎先輩、俺もサンマさん探し手伝うー。人手、多いほうがいいでしょー？」
「助かるよ」
　優の協力は、とてもありがたかった。
「詳しいことは、店の中で話すよ」

　ふたりを店内に招き入れようとした五郎八は、客の中に、見たことがある人物がいるのに気付いた。
（華菜子ちゃんと華蓮さんがいたような気がしたけど……だ、大丈夫だよ、ね？）
　何か嫌なことが起きそうな予感は、店の様子を窺いにきた華菜子に会ったことで的中した。

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サンマガチャ、ガチャガチャ

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