サンマガチャ、ガチャガチャ｜リアクション

サンマガチャ、ガチャガチャ

●紛れ込んだサンマさんガチャ

「さて、今日も１日頑張りますか」
　サンマさんガチャ逃走騒ぎの少し前。
　パワーストーン専門店「幸」の店主の磴琥珀は、９時ちょうどに店を開けるべくマイペースで開店準備を。
「今日も今日で、のんびりとした１日が始まりそうですねぇ」
　準備が終わり、いつでも客を迎えられるよう待っていると、店のどこかからコソコソと物音がした。
　それと同時に、何らかの気配を感じ取った。
「どこからでしょう？」
　気配を辿った先で見たものは、カウンターにある小さなサンマさんだった。
「おやおや、小さなサンマさんですねぇ。しかも、頭に三角巾らしきもの被って、白い着物を着て」
　幽霊みたいですねぇ、と玩具サンマさんを見た琥珀は、会話できるでしょうか？　と話しかけた。
「おはようございます。あなたは、サンマさんですか？」
　話しかけるが、何の反応も無い。
「……どうやら喋れないようですねぇ。実物のサンマさんは大きいですから、彼は玩具なんでしょうねぇ」
　どうしてこんなところに玩具のサンマさんがいるんでしょうか？　と考える。
「【ZePet】さんのところに、サンマさんガチャがありましたねぇ。そこの売り物でしょうか」
　そうだとしたら、どうやって来たのかわからないサンマさんガチャを返すべきだ。
　捕まえようと手を伸ばすと、幽霊サンマさんはゆっくり浮き上がり、宙をふわふわ飛んで店内をうろつく。
　神魂の影響もあり、幽霊なのに素早く、勢いよく店内を飛び回る。
「いやあ、元気ですねぇ。飛び回るのはいいですけど、商品に触れないでくださいねぇ」
　パワーストーンにぶつかり、傷がついてしまっては大切な商品が売り物にならない。
　それだけが心配な琥珀だった。

　パワーストーン専門店「幸」開店と同時刻。

「いやー、夏は暑いですねえ！」
　革製品の劣化を防ぐため、靴屋「Cat's rear paws」は、陽があまり射さない裏路地に店を構えている。
「この時期の日差しはまぶしい！　でもいい天気！」
　茶髪のツインテールに赤のカラコン、オレンジのワンピースに木製のサンダルといったナチュラルめな格好をした沓冠梢太朗が開店の準備を。
　女の子に見えるが、ことあるたびにかつらや化粧で変装する「Cat's rear paws」店長で、２８歳男性だ。
　開店準備中、床に何やら落ちた音がした。
「何でしょう？」
　音がしたほうに行ってみると、小さなガチャ玩具が落ちていた。
「……はて？　いつの間に。なにやらピチピチしているものが動いてますね」
　それをじーっと見ると、それは小さなサンマさんガチャ玩具だった。
「サンマさんのガチャガチャですかー。いやー可愛らしい！　こういうの集めるのって楽しいですよねー！」
　南国風衣装、手に何かを持っているが、靴と足を愛する梢太朗は真っ先に足元チェック。
「素足ではなく、ビーチサンダルをしっかりと履いているじゃないですか！　いやあ、いいですねえ！　リアルですねえ！」
　玩具だが、ビーチサンダルのゴム底がしっかりしている。
　サンダルの柄が細かいなど、靴が大好きな梢太朗ならではの視点でじっくり観察。
　もう少し観察を……と思っていたら、サンマさんガチャが梢太朗の手から逃げ出すように離れた。
　脱兎のごとく逃げ、店内を縦横無尽に素早く飛び回っているうちに、どこかに姿を消してしまった。
「大変です！　売り物の靴にサンマさんが紛れ込んだかもしれません！」
　開店し、客が興味を示した靴を試し履きしている最中に踏みつぶされては大変だ。
　まだ誰も客が来ていないので、誰かが来るまで、店内にある靴の中をしらみつぶしに探すことに。
「ガチャサンマさーん、出てきてくださいー！　それと、売り物の靴に傷をつけないでくださいねー！」
　サンマさんガチャ破損もだが、売り物の靴の破損も心配する梢太朗だった。

　ふたりの店主にとっては、突然やって来たサンマさんガチャは傍迷惑な珍客であった。

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