星ヶ丘教会のお茶会｜リアクション

星ヶ丘教会のお茶会

「ん、全問正解だ」
　八神の声に、どきどきと採点を見守っていた椿がこぶしを握りガッツポーズする。
「ふふ、やっぱりできるじゃないか」
　八神は実に満足そうだ。が。
「これでお茶会が楽しめるっ」
　椿の喜びは問題を解けたところとは別にあった。
「仕方ない。約束だったからな」
　苦笑した八神が席を立つと、トレーを取って椿の背後に回る。
「八神ぶちょー？」
　きょとんとする椿の前に、綺麗に切り分けられたシュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ。黒い森のさくらんぼケーキが置かれる。
「今日、一番のお勧めだそうだよ」
　あらかじめ、シスターに聞いて椿の分を取り分けて貰っていたのだ。
「うわぁ……美味しそう！」
　そわそわと落ち着かない椿に苦笑しながら、ケーキ皿の隣にグラスをサーブする。
「もう問題集は出さないから、心置きなく楽しんでくれ」
「いただきます！」
　心配事がなくなった椿はフォークを取ると嬉しそうに笑った。
　その様子を満足そうに眺めて、八神も席に戻る。
「八神ぶちょー、おいしいですー」
「それは良かった。……あぁ、そうだ」
　うっとりと目を細めていた椿だが、八神が足元をごそごそするのを見て、びくりと怯える。
「え、まさか次は英語の問題集ですか……？」
　八神ぶちょー、信用がない。　
「問題集はもう出さないって言っただろう？」
　ことん、とテーブルの上に置かれたのは小型のケージ。中にはぐうぐう寝ている二匹のハムスター。
「あ、この子達って……」
【あるひまわり畑で面倒なことが起きました】で紆余曲折を経て里親を募集することになったハム集団の二匹だ。
「里親に、と名乗り出てくれただろう？　ケージとひまわりの種と餌の袋、一通りそろえてある」
「わぁ、ありがとう！　でも、二匹一緒で大丈夫なのかな」
　繁殖を心配して、椿がケージを覗き込む。
「二匹とも雄だから増えてしまう心配はないよ。この二匹は相性も良い」
　世話をしている八神の太鼓判に、椿が安心して微笑んだ。
「貰ってくれるかい？」
「はい、任せてください！　お花や野菜と変わらず大事に育てます！」
　椿の植物愛を知っている八神は、それなら安心だ、と目を細めてケージを椿に差し出す。
「ありがとうございます……二匹だから、んーマサキと、アキ！　ふふっ、よろしくね」
　すやすや眠る二匹を眺めて椿が楽しそうに呟いた。