星ヶ丘教会のお茶会｜リアクション

星ヶ丘教会のお茶会

「わぁ、このお茶、なんだかチョコレートを食べてるみたいです」
「紅茶にチョコレートの香りを移しているから、お砂糖を入れなくてもなんだか甘い気がするでしょう」
「はい、さっきのキャラメルティーみたい……あ、じゃぁミルクティーに合うんでしょうか？」
「正解です」
　色々なお茶を飲み比べているのは、先輩後輩メイドコンビの御陵と桧垣だ。
　ふむふむ頷きながら、小さなノートにお茶の感想や特徴を記入するに桧垣が目を細める。
「沢山教えてくださってありがとうございます！　ばんり先輩」
　素直に知識を吸収していく御陵は可愛い後輩だ。みっともないところを見せたりしないように、自分も頑張ろう、と桧垣が決意を新たにしたところに……。
「気にしないで……って、あら、ウサギ？」
　ぴょこぴょこと茂みから二匹の白兎が飛び出してきた。一匹は、恐らく捕食者という名の後木から逃げてきたあの兎だろう。
「わぁ、可愛いっ」
「猫なら良く見るけど、ウサギは珍しいわね」
　捕食者的なオーラが二人に無いせいか、二匹の兎が足元に寄ってきた。
「ちょっと失礼して抱っこさせてもらえるかしら？」
「ふわ～可愛いですっちょっといいですか～？」
　二人がそっと二匹の白兎を抱き上げた。
「わぁ！　あなたとっても、ふあっふあしてまちゅね～」
　先輩メイドとしてきりっとしていたはずの桧垣が赤ちゃん言葉を話し出した。
「ほんともふもふでしゅねぇ」
　笑み崩れている御陵も同じく赤ちゃん言葉。
「うさぎさんぽかぽか、あったかいでちゅ！……ばぶぅ？」
　あれ、と不思議そうに首を傾げる御陵。
「とっても、かあいいのでしゅ～」
　すりすりと兎に頬ずりする桧垣。
「ふちぎでちゅけど、ばんりしぇんぱいが、かーいーからおーるおっけーれしゅ！」
「……大丈夫？」
　通りがかった雨宮が思わず声をかける。
「「ふぁ！」」
　びくっと驚いた二人の大声に、腕の中の兎が暴れて逃げ出す。
「あ、ウサギさん……ん、戻った？」
「あら、なんだかちょっと変だったような」
　首を傾げる二人の様子をじっとみて、雨宮は小さく息をついた。
「……大丈夫そうね。驚かせてごめんなさい」
　おそらく何かの神魂なのだろう。だが、口調が少々おかしくなるだけで、しかもごく短期間の影響のようだ。これなら問題ないだろう、と結論づけ、雨宮が立ち去ろうときびすを返す。
「あ、待ってください。その声、アメイジング・グレイスを歌っていた方ですよね？」
　御陵が頬を紅潮させて雨宮を呼び止めた。