夏だ、きもだめし委員会！｜リアクション

夏だ、きもだめし委員会！

●エピローグ

　――こうしてきもだめし委員会主催の校内きもだめし大会は盛況のうちに幕を閉じた。きもだめし委員長の木茂為史氏は、『今年は例年になく凝った仕掛けが多く、参加者のみなさんにも楽しんでいただけたと思う。協力してくれたきもだめし委員のみんなに感謝したい』と語った――

　きもだめし大会からしばらくたったある日の夕方。
　廊下に差し込む夕日の赤と長く伸びる影の黒が織りなす幾何学模様に紛れて、ひとりの少年が校内に張り出された新聞を眺めている。前髪は長く鼻先まで伸びており、表情はわからない。

　記事の下には『心霊写真！？』と見出しのついた集合写真。
　傍に小さくこんな記事も載っている。

　北校舎１階廊下の囁き声は、寝子高新七不思議か！？
　――きもだめし大会中、北校舎１階の廊下で奇妙な声を聞いたという者が続出した。きもだめし委員として１階の美術室を担当していたマウル・赤城・スティックさんは語る。「俺も聞きました。『もういっちゃうの』とか、『いかないで』とかいう声を。聞き覚えの無い声でした。不思議です。あとできもだめし委員全員に確認しましたが、１階の廊下でそんな仕掛けをしていた人はいなかったんです』と。真相は闇の中であるが、この謎の声を、寝子高新七不思議のひとつと数える生徒もおり――

　クスクス、クスクス。
　少年は笑う。
「寝子高新七不思議だってさ。きもだめし委員より早く行って、第三者として全員をろっこんで驚かせる作戦、上手くいったじゃんよ」
　少年――霧谷朧は、いたずらっぽく唇を舐めた。
　彼は、きもだめし委員とは別口で最初から校内に潜んでいた。そしてきもだめし大会が始まると自身のろっこん＜ハイドサイト＞で透明化し、声色を変えて参加者のみならずきもだめし委員をも驚かせていたのだ。廊下を横切る白い影も、じつは白いポンチョを被った朧だった。
　だが、その朧にもわからないことがあった。
　集合写真に写った３０人目のことである。
　３０人目は朧だったのか。
　朧の答えはこうだった。
　――３０人目は、自分ではない。なぜなら、自分はあの夜、屋上へは行かなかったのだから。
　
「はは、本物の幽霊ってか？　それもまた一興さね。あーいっぱい驚かせて楽しかった。さ、帰るか……」
　暮れゆく薄闇の中から微かな声が聞こえた気がして、朧は振り返る。
「ん？　誰かに呼ばれたか？　もーいいかいって……」
　だが、そこには誰もいない。少なくとも、いないように見えた。
　朧は両目を手で覆うと、くすくす笑った。

　――まーだだよ。

　＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加いただきありがとうございました！
ゲームマスターを務めさせていただきました、笈地行（おいちあん）です。
今回初顔合わせの方が１／３近くいらっしゃって、大変感激しております。
ぜひぜひ、今後ともよろしくお願いいたします。

さて、今回はこんな感じでとても楽しく、ちょっと不思議な校内きもだめし大会となりました。

仕掛け役とお客さんの人数バランスが良かったのもとても有難かったです。
きもだめし向きのろっこんがいっぱいあって面白いなあと思いました。
仕掛け役の方は、お名前がなかなか登場しないのでわかりにくいかもしれませんが
どうぞご自分の仕掛け描写を探してみてくださいませ～。

またいつか、「きもだめし委員会」や「きも先輩」に遭遇した際には……
またびっくりどっきり仲良くしてやってくださいね！

それでは、此度はこれにて。
またいつかご縁がございましたら嬉しいです。

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