厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。｜リアクション

厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。

●お食事を楽しみましょう

　壁一面が窓。
　シャ・レーヌはステラ・デッラ・コリーナの二十階にある。
　それだけの高さから俯瞰すると、寝子島中を見渡せるような気がした。
「素敵ね」と鷲尾礼美が呟き、「そうネェ～」富士山権蔵も恍惚と頷いた。
　その時間を邪魔しないように、尾鎌蛇那伊は手近なところからヨーグルトの冷製スープを取ってきてから、ふたりに声をかけた。
「先生方はなにを飲まれますか？」
「あら、ごめんなさい。尾鎌君は気にせず楽しんできていいのよ？」
「十分楽しんでますよ」
　既に取ってきたスープを見せると、「そう？」と礼美は引き下がる。
「じゃあアタシはなにか食前酢のようなものをいただこうかしら？」
　フジコがくすりと笑うように、蛇那伊に注文した。
「……じゃ、私は胃が温まるものを頂くわね」
「承知しました」
　仰々しくない程度に頭を下げて蛇那伊は飲み物のコーナーに向かった。
　まずは飲み物を持ってくると申し出たのには理由がある。
　食物よりも、先生方が気を使わずに済むだろうから、という単純な理由なのだが、そんな蛇那伊の気配りは見事成功した。
　と同時に自分自身の食事の準備も進めておく。これも、より先生方が心地よく食事をするための、蛇那伊なりの心配りだ。
（こうでもしてないと、うっかり食べ過ぎちゃうからね）
　そんな側面もある彼の行動。
　人にやさしく、自分に厳しい。
　蛇那伊はやはり蛇那伊だった。

　抑制をする高校生というのも実に立派。
　けれどデキる大人は、羽目の外し方もよく知っている。
「最初は生ビールでも頂きましょう！　ぷち贅沢だぜ！」
　伊予祐は会場に入るとさっそく給仕を呼んで、生ビール（ジョッキ）を注文した。
「渚砂さんもどうっすか？　俺が一杯奢りますよ」
「お酒かー、」
　霧生渚砂は、テンション高めに返事をして、ただ語尾を伸ばすことで思案の時間を作った。
（記憶喪失だから、『たぶん』二十歳超えてるとしか言えないんだが）
　飲んで、彼に迷惑をかけないかな？
　うーんと、渚砂は悩んだ。
（でも既に結構何度も飲んでしまったからな……今更だ）
　しかしあまり時間をかけずに結論を出すのであった。
（たぶん二十歳越しているだろう！　今日も飲もう！）
「奢ってくれるのか、ありがとう！」