暑いしだるいし、モウヤメミ～ン！｜リアクション

暑いしだるいし、モウヤメミ～ン！

◇そろそろお山に帰る頃

　九夜山のふもとで、捕まったモウヤメミンたちが自然へと帰されていく。
　山には夕日がさしかかり、木々を茜色に染め上げていた。

　すばるがセミのお腹に脱脂綿をつけるのを見て、実が不思議そうに首を傾げた。
「それ、つけてどうするんだ……？」
「んー、腹弁を固定すれば鳴き声とまるかなと思って」
　もこもこの綿をまとったセミが動きにくそうに羽を震わせる。
　厳密には腹弁は音を鳴らす器官ではないのだが、この綿も防音材の役目は果たしてくれるだろう。
「寿命を考えれば、あとは山に帰しても大丈夫そうね」
　美野梨のしらべた限りでは、新種のセミではなかったらしい。
　すばるが頷き、処置を施したセミを宙へ放り投げる。
「よし、飛んでけー」
　夕暮れの山に飛んでいくセミを見送り、実がつぶやく。
「……よかった」
　捕まらなくて、本当によかった。
　そんな本音は、不審者と間違われたことと共にそっとしまっておく事にした。

　虫カゴから出て飛んでいくセミに、凛もまたおおきく手をふる。
　セミの飛び去った方角を見つめながら、夏朝がつぶやいた。
「普通のセミさんに戻るといいなぁ……」
「まあ、自然の中だしなんとかなるんじゃないか？」
　春告は母親が無事だったことに安心し、胸をなでおろした。
　さりげなく確認してみたが、眼帯を外した時の左目も見られていなかったようだ。

「たいへんな一日だったねぇ」
　感慨深げにつぶやく勇生に、だな、と修が短く返す。
「セミが地上で生きる時間は短いんだよ。でも今ならパートナー探しも間に合うかもな」
　語りながらスマホで騒ぎの収束を確認する。島の人たちも、元凶がいなくなったからには大丈夫だろう。
（やっぱりぶちょーには、スマホが似合うわねー）
　そんな事を思って美咲紀が横目で見ていると、修が彼女の方に向き直ってこう付け加える。
「もちろん、俺達の学生時代もあっという間だ。セミの生涯に教訓を得たな。というわけで」
　そこでいったん言葉を切り、修はこれ以上ない爽やかな笑顔をみせた。
「椿。帰ったら予定通り数学の勉強だ。ビシバシしごくから覚悟しろよ？」
「お、おおー……お手やわらかに……」
　一気に現実に引き戻され、美咲紀がついっと修の顔から目をそらす。
　見ていた勇生からもあちゃー、という声がもれた。

　そして誰もが家へと帰り、すっかり日が沈んだ頃。
　山奥の木に宿っていた怪しげな光が、すこしずつ薄れていく。
　完全に消えてしまう前に、一度だけ鳴き声が聞こえた。
『エー、オッホン』
　その一声が、この怪事件に幕が降りた瞬間であった。

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あとがき

担当マスター：詩帆ミチル
ファンレターはマスターページから！

皆様、お待たせしました！
「暑いしだるいし、モウヤメミ～ン！」のリアクションをお届けします。

巻き込まれ型から真剣に立ち向かうものなど様々なアクションをいただきましたので、
リアクションは息のあいそうな方同士で共闘する展開となっています。
皆様の寝子島ライフに彩りを加えられたら幸いです。

このたびはご参加いただき、ありがとうございました！
素敵な夏をお過ごしください！　詩帆ミチルでした。

※お詫び
シナリオガイドとマスターコメント内において、
「セミの羽が赤く光る」「黄色に光っている」など表記の統一されていない箇所がありました。
ご不便をおかけしました事をお詫び申し上げます。

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