はじめてのおさぼり？｜リアクション

はじめてのおさぼり？

　こうして、またしても大所帯になった一行。
「僕も、かわいいのを買いたいな……」
　恵御納夏朝もワゴンの中の商品を、一つ一つ手にとっては広げてみる。
　その横には北原みゆき。
「夏朝ちゃん、キュート系が似合いそうだよねぇ」
「ありがとう……あ、これどうかな？」
　夏朝が引っ張りだした、ゆるふわキャミソールに、みゆきは力強く頷いた。
「とっても似あうと思うよぉ。普段着るなら、下をデニムのパンツにして、甘辛コーディネートにするといいかも？」
『こっちも　にあうとおもう』
　小山内海も、ラグランのＴシャツを夏朝に合わせて見る。
「あ、いいねぇ。色もデザインも可愛い～」
　みゆきの同意に、海もはにかんだ。美術に造詣のある二人には、通じる所があるようだ。
「本当？　買っちゃおうかな……。北原さんは、どんなのを探してるの……？」
「私は、特にこれっというのないかなぁ。何か気に入ったのがあったら、買ってみようかなってくらいで」
　みゆきの返答は、尻すぼみだ。
　というのも、彼女は自分の体型に自信がなかった。
　胸が大きい割りに、身長が低くアンバランスなのである。

　しょんぼりするみゆきを見て、海は早速ワゴンに手を突っ込んで、彼女に似合いそうな服を探し始めた。
『これは？』
　海が引っ張り出したのは、チューブトップのインナーだった。
「えっ、大胆すぎないかなぁ？」
　慌てるみゆきにクルリと背を向けて、海は別の場所から薄いカーデと、ショートパンツを引き出してきた。
『それに　これをあわせるの　どう？』
「落ち着いた雰囲気で、いいね……」
『みゆきちゃん　グラマーだから　むなもとはすっきりさせたほうがいいよ　カーデでたてのラインをつくって　しせんをながすの』
「そ、そっかぁ」
　海が勧めてくれた服を、みゆきは鏡の前で合わせてみる。
「確かに、しっくりくるかも……これなら、あのサンダルとか合わせてもいいかなぁ？」
　夏らしい涼しげなサンダルを手に取って、みゆきは首を傾げた。
『うん　いいかんじ』
「似あうと思うよ」
　夏朝もこくりと頷いた。

　美咲紀も少女達の手で着せ替え人形になっていた。
「このシャーリー、きれいめで良くない？」
　詠坂紫蓮が美咲紀に、ミント色のスカートをあてがう。
「こっちの花柄も美咲紀ちゃんらしくて可愛いのだ」
「ロンパースも似あうと思うな♪」
「少し個性を出して、サルエルパンツは？」
　後木真央や普堂しおり、旅鴉月詠まで一緒になって、美咲紀にコレ！　と思った服を、掴んで持ってくる。
「うぅ、どれもステキなのです……でも、さすがに全部はムーリー！！」
　お洋服を抱きしめて、涙する美咲紀に少女達の天真爛漫な笑い声が響いた。

　一方、こちらは男性陣。
　ベンチに座り、ニャレバンで購入した本を黙々と読み進む倉前七瀬の隣に腰掛けて、八神修は虚ろな目をしていた。
　全く、女の子というのは、どうしてああも買い物に時間がかかるのだろう。
　修の視線の先で、あおいは綾辻綾花やしおりと一緒に、猫型ペンダントに魅入っていた。
　ののこも夢宮瑠奈と、鏡の前で帽士をとっかえひっかえして、試している。

「キミも読むとですか？」
　ふいに七瀬が、修に本の山を指した。
「ああ……ありがとう……」

　羽衣と実々は、アクセサリー小物のお店に来ていた。
「ヘアピンかぁ……あまり付けないけど、実々ちゃんがいつもしてるの可愛いよねー」
　実々のブルーとイエローの星の髪飾りを、羽衣はまじまじと見つめた。
「えへへ。ありがと、これお気に入りなんだ」
「そっかー、いいなぁ」
　悩んだ末、羽衣は同じものを見つけ出して、それを購入した。
「お揃いだね」
「うん♪」
　包装してもらったヘアピンを、大事そうに胸に抱える羽衣に、実々はあどけなく微笑んだ。

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