白いマスクの女性の真実｜リアクション

白いマスクの女性の真実

　陽が高い時間帯に桜庭円と御剣刀は旧市街で落ち合った。円は胸ポケットの付いた白いＴシャツに茶色の短パン姿。刀はモスグリーンのＴシャツに七分丈の黒いズボンを穿いていた。
　開口一番、円が提案した。
「口裂け女の情報だけど、ぼくはこっちで聞くから、刀くんはあっちね」
「いきなりだな。二人が揃って聞き込みするよりは捗るけれど、何について聞くかを決めておかないか」
「そうだねー。掲示板の書き込みでわかる部分はあっちに寄せて」
　円は箒で掃く真似をして、ぴんと人差し指を立てた。
「口裂け女が帰る方向を知りたい！」
「どこからどこへ向かうのかがわかれば、先回りも可能になるか。俺はワンピースの色と、どんなランニングシューズなのかを聞くことにしよう」
　それ、と円は赤い瞳を輝かせて言った。
「ぼくもランニングシューズは気になってたから、いろんな人に聞いてみるよ。なにかあったら、ケータイで連絡するね」
　円は決めた方向に走り出し、倍の速さで戻ってきた。
「言い忘れてたんだけど、相手は男かもしれないから用心してね」
「そうなのか？」
「小さな声が怪しいよね。大きなマスクで顔だって隠せるし」
「わかった、頭に入れておく。桜庭も気を付けてな」
　刀の心配をよそに円は笑って後退り、切れのある拳を何発も繰り出した。
「ぼくには拳って武器があるけど、刀くんは丸腰なんだからね！」
　緑の髪を弾ませて円は街に溶け込んでいった。
「俺も行くか」
　速やかに踵を返し、無駄のない動きで聞き込みを開始した。

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