白いマスクの女性の真実｜リアクション

白いマスクの女性の真実

　日本家屋を思わせる瓦屋根の寝子島駅。手前には赤い筒型のポストが設置されていて、その横に花菱朱音が落ち着かない様子で立っていた。サイトに書き込んだ文章を改めて見直す。
「……今日の私の服装はグレーのジャケットで、黒髪にカラフルなヘアピンを多数ですよね」
　指の感覚で数えるかのようにヘアピンに触れる。
「童顔で眼鏡。あ、形と黒縁を書いてない……大丈夫ですよね！」
　自分の言葉にポジティブ思考で頷いた。
「似たような服装の人は……」
　どんぐり眼が周囲の人々に向けられ、数分の観察で表情が和らいだ。
「服装は大丈夫です」
　隣のポストに横目をやって、邪魔かな？　と言って少し前に出た。どこからでも見える位置に立つと、歩いている人々に期待の眼差しを向けた。
　視線を受けて立ち止まる人物はいなかった。苦笑いに近い表情で朱音はケータイの時間を目にする。
「……朝の九時は早すぎですよねぇ」
　待ち合わせの時間は夕方の五時である。サイトで告知した文章は改めて見ても変わらなかった。
　朱音は参道商店街に目を据えた。疎らではあるが人はいる。白いマスクの女性に繋がる有力な情報が得られるかもしれない。
「先に調べてもいいよね！」
　力強い自分の声の後押しで飛び出していった。

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