逆転！？大騒動～これじゃ水着が着られない～雄っぱいもあるよ！｜リアクション

逆転！？大騒動～これじゃ水着が着られない～雄っぱいもあるよ！

　ブラジリアンビキニ。
　それはTバックなど露出の多いセクシーな水着。マイクロビキニと呼ばれるようなほとんど紐に近い水着も含まれる。
　Ｔバックの水着が売っているのなら、当然その隣にあるべき商品がある。
「なんで水褌が売ってないのだー！」
　ぷんぷんしながら水着売り場を闊歩するのは後木真央。
　露出具合ならそう変わらないのに（？）水褌コーナーが無いことにお怒りだ。
「みんな褌の格好良さに気がつくのだ！　そして問い合わせるのだ！　製品化するのだ！　一気に褌流行スタイルなのだー！」
　そう、彼女は褌を普及させたがっていた。その情熱は、自作の赤い水褌を身につけ、ライバルである水着よりかっこいい所を見せ付け、普及させればいい、という素晴らしい思考回路をたどり、今に至る。
「ブラジリアン水着より褌が格好良いと見て分かって貰うのだ！」
　ばっ！と上着を脱ぎさる。
「これも普及活動なの……だ？」
　こてん、と首をかしげる後木。
　胸元を飾るのはリボンの形にまとめられたサラシ。陸上部で鍛えたすらりとした体のライン。そして彼女が普及を目指す同じ色の水褌。すらりとした脚や張りのある肌が強調され、確かにたいへん素晴らしい着こなしではあるが、なぜ商業施設の屋上で練り歩くのか。
「わわっ、試着室はどこなのだー！？」
　後木があわてて試着室へと走り出したのは、警備員に追いかけられた訳でも、羞恥心に襲われた訳でもなかった。
「失礼するのだ！」
　空いていた試着室に駆け込むと、後木は自分の胸元を押さえて現実を確認する。
「や、やっぱり……」
　リボンで止められていたサラシを解いて、鏡に映る自分の姿を確認する。
「なくなってるのだー」
　そう、後木の胸は雄っぱいに変化していたのだ！
「これは……もしや下も生えちゃったりするのだ？」
　神魂騒動に慣れているのか、さほど戸惑わず、先ずは確認、と褌を脱ぐ。

「上が無いなら下はあってくれないと困るのだ～！」
　眉をハの字に下げて、後木が生えていないことに絶望する。
「上があるなら下はなしでいいのだー！　どっちかにするのだー！」
　天に向かって文句を言っても、応えてくれるものはいない。
「このままじゃ大会出られないのだ～」
　とほほ、と肩を落として床にへたり込む後木。
　そう、彼女は陸上選手。
　陸上競技は男女別のエントリー。つまり、胸は漢でその他は女性、という状態では非常に困るのだ。　　　
「うー、神魂なら時間がたてば治ると思うのだ。とりあえずもう少し待ってみるのだ～」
　申し訳ないが試着室に立てこもることに決め、後木はもそもそと水褌を着なおすのだった。

　

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