夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「これではサンドアートが雪だるまになってしまうな」
　せっかくの傑作に降り積もってゆく雪に、月詠はそんな感想を漏らす。
「なんということでしょう！　真夏の海が吹雪に覆われています！　これは、一大事件です！」
　美咲紀が叫ぶ。
　けれどもどこかうれしそうなのは、きっと新聞部の性だろう。
　スクープには敏感なのだ。
「ふむ。異常気象だろうか」
　とりあえずパーカーを羽織って、月詠は傍観者を決め込む。
「異常気象？　そうですね、これは普通ではありません。っと、大変です、可愛いにゃんこたちが雪に埋もれてしまいますっ」
　言うが早いか、美咲紀はデジカメもマイクも放り投げる勢いでお猫様たちを抱き上げる。
　急の吹雪に戸惑っているのは人間だけではない。
　猫もびっくりなのだ。
「猫の救助か。悪くない」
　乗りかかった船というか、成り行きというか。
　目の前で美咲紀が猫を救助しだしたので、月詠も猫を抱っこする。
　二人で安全な海の家にお猫様を運び込む。
「ぜーぜーぜー、あと何匹でしょうか、全てのにゃんこたちを助けますよー！」
「あ、マスター。すまないがラーメンとか温かいものですぐ出せるよう、できるだけ用意してくれ。それとこの猫達にも何か食べれるものはあるだろうか」
　金は全て払うからと、月詠が一義に頼み込む。
「ラーメンはすぐに作る。だが金はいらないな」
「ラーメン作りならあたしも手伝えるよ」
　代真子がすかさず腕まくり。
　ありとあらゆるラーメンを食べつくし、ラーメンに定評のある女といわれているのは伊達じゃない。
「恩に着る」
　粋な一義とボランティア精神で手伝う代真子に礼をいい、月詠と美咲紀は残ったお猫様たちも海の家に運び込む。
　寝子島ならではの数が集まったが、それで全てかはわからない。
「にゃんこたちがまだ海辺で震えているかもしれません！」
「探すのか。付き合うしかなさそうだな」
　猫好きの美咲紀と、面倒くさがりつつも見捨てない月詠。
　二人は、お猫様を救助すべく浜辺を捜索しだす。