春先迷路｜リアクション

春先迷路

「お茶の間のヒーロー、クロセル見参ッ！」

　
　すちゃっ☆

　思いっきりポーズを決めて、クロセル・ラインツァートは大衆を見る。
　唖然と見つめる人々に、クロセルは仮面の奥の黒い瞳をキラリ☆

「さぁ、そこのお嬢さん、お兄さんもお姉さんも叔父さんも叔母さんも、このヒーローを頼って下さい！」

　さわやかな笑顔で周囲を見渡すクロセル。
　けれど唖然とした人々はすすすーっと、クロセルと距離をとり目を逸らす。

「えっと……ヒーロー、お呼びじゃなかったりします？」

　シーンとしてしまった周囲に、ほんのり、冷や汗をたらすクロセル。
　その彼に、一人の女の子が駆け寄ってきた。

「ヒーローさん、この子を上げるのよ」
「おおっ、これは猫ではないですか。ありがとうございます！」
「うんうん、ヒーローさん、頑張ってね！」
「はいっ」

　女の子から野良猫を受け取ったクロセルは、ご機嫌に抱っこして次ぎの場所へ歩き出す。
　ちなみに次の場所は未定だ。
　だって、ヒーローだから神出鬼没なのです。