夏のおでん鍋会｜リアクション

夏のおでん鍋会

○ささ美救出

「骨くん！」
　３人は、ちょうど自室に戻ろうとする瓢を捕まえた。
「おやおや、そんなに慌てていったいどうしたんだい？」
「ささ美をどこへやったの？　返して！」
　空音の追及に、ヘラヘラと笑って手に持った包みを開いてみせる。
「さあ、何のことかあっしにはわからないねえ？　肉がどうかしたのかい？」
「とぼけないで。ちゃんとてば崎に聞い……って、まさかそれ！？」
　包みの中には、おいしそうなつくねが並んでいた……！
「こ、これは……」　
「「えーっ、まさか！？　ささ美ーっ！？」」
「……ココ？」
　荒太郎と空音が青ざめて絶叫したとき、小さく鶏の声がした。
「静かに。部屋の中にいるな？」
　修がそう言って耳を澄ますと、こちらへ来ようとしているのだろうか、部屋の中でバタバタ暴れる羽音と鳴き声が聞こえてきた。
「チッ、もう少しだったんだがねえ……わかった、返すよぃ」
　瓢が扉を開けると、ささ美が飛び出して……修に向かってまっすぐ飛んできた。
「おいおい、もう大丈夫だから落ち着け」
「うう、良かったささ美……」
「もう、びっくりさせないでよー」
　ふと、修は部屋の中から昆布だしの香りが漂ってきたような気がした。
　だが誰もそのことは気に留めず、ささ美は無事保護されて修に抱かれて鶏小屋へ向かった。
　荒太郎はじゃがいもやキャベツ、畑でとれた野菜も運び出す。

「こんにちは～。真央ちゃんからおでん祭りを聞き駆けつけました。あっ、ぶちょー」
「椿か。これから鶏小屋に行くところだ」
　椿美咲紀が玄関を訪れていた。後木真央や修とは新聞部仲間だ。
「家庭菜園で朝採りしたキュウリ・プチトマト・お茄子。日除けのゴーヤも実が付いたので持ってきちゃった。
　サラダ用にしゃきしゃきレタス。おでんに入れたいので餅巾着も買って来たのよ。えっへん」
「わあ、サラダもあれば飽きずに楽しめるね」
　荒太郎も空音も野菜の差し入れを喜んだ。　

　美咲紀も一緒に鶏小屋に向かう。
「こんにちは。ささ美さん、無事で良かったです……可愛いお子さんたちを見せていただいていました」
　時子が無事戻ったささ美にも挨拶する。
　てば崎と雛たちはささ美の元に駆けつける……かと思いきや、初対面の修に猛突進。
「そんなに急かさなくても今餌をやるから……」
　微笑む修。
　雛は小さなクチバシやおしりをふりふり、てば崎やささ美と共にスリスリしてくる。
「！　何をニヤニヤ見てるんだ皆」
　周りの視線に気づき、少し焦る修。
「何か皆さんに伝えたいことがありますか……？」
　おっとりと時子が鶏夫婦の言葉を通訳する。
「雛たちの誕生を祝ってくれてありがとう、これからもよろしく、と言ってます……
　ラン卵さんとはんぺんさんは、『ママお帰り～、今日はたくさんひとがいるね～』って」
「お前たちも安心したんだな……よしよし」
　優しく修が雛たちを撫でる。
「さすがぶちょー、鶏にも大人気ですね。
　雛が孵ったお祝いに雛たちには青菜を献上なのです。さあこれを啄んで早く大きくおなりー」
　雛がもふもふで超かわいい♪　はにゃん。
　と、ご機嫌な美咲紀。
　修も青菜を片手に鶏たちとのスキンシップを楽しむ。
　念の為に首輪とリードはつけてある子猫のブラックにも、雛たちは興味津々の目を向ける。
「子猫のブラックもつれてきた。『こんにちはにゃー』と言ってる」
「えっ、ぶちょー、ついに猫の言葉がわかるようになったんですか？」
　目を丸くする美咲紀に、
「……なんてな」
　と微笑む修。
「もー、びっくりしちゃいました～」
「とにかく無事で良かったよ……えへへー、これで安心してかきかきできる」
　空音は、描きかけのイラストの続きを描きはじめた。
「上手だね～」
　と感心する美咲紀。
「できたっ！　折角だから鶏小屋に貼り付けとこっ！」
　と、空音はセロテープでイラストを鶏小屋に貼りつけた。
「ヒヨコさんたちと遊んでたらお腹すっごく空いてきちゃった。
　今日の猫鳴館のご飯はおでんなんだね！　材料持ってくるから混ぜて混ぜてーっ！」
　時子もおっとりと答えた。
「ええ、私も持ってきました……おでんを食べるのは久しぶりです……雛の誕生をみんなでお祝いしたいです」

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夏のおでん鍋会

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