夏のおでん鍋会｜リアクション

夏のおでん鍋会

○消えたささ美！

「鳥さんの雛が孵ったのですね……」
　御巫時子は、優からの連絡を受けて大根と玉子を出汁でぐつぐつと煮込んた。
「味が染みて美味しくなりましたね。辛子も持って行きましょう……」
　お土産を持ち白い日傘を差して、猫鳴館に着いてみれば。
「こんにちは……あの、何か探し物ですか……？」
　庭では荒太郎が膝を着いて茂みを覗き込んでいる。
「あっ、こんにちは～。実は、ささ美が見当らなくなっちゃって……」
「菜園のほうにもいなかったよ～。どうしよう？」
　手分けして探していた空音も戻ってきた。
「それは大変ですね……あの、私、鳥さんに聞いてみます」
「その手があったね！」
　さっそく鶏小屋に向かった時子は、雛の可愛らしさに顔を綻ばせた。
「ピヨピヨ」「ピーピーヨ」
　だが今は緊急事態だ。ろっこん『鳥の囀り』を使って、てば崎に話しかける。
「こんにちは、てば崎さんですね。ヒヨコさんの誕生おめでとうございます……。とっても可愛いですね。
　ところで、ささ美さんの姿が見えないようですが……？」
　てば崎はさほど心配した様子もなく返事を返した。
「あの……着物を着て髪の毛に寝ぐせがある人が連れていったそうです……ラン卵さんとはんぺんさんは、ちょっと寂しいみたいでお母さんを呼んでいます」　
　時子の通訳に、荒太郎が飛び上がる。
「なんだってー！　それって骨くんのことー？」
「うわあ、ドクロベーくんならやりそうだよねえ。大丈夫かな？」
　空音も瓢のいたずら好きをよく知っている。
「と、とにかく骨くんを探すよー！」
　２人が慌てて猫鳴館へ向かうのを見送り、時子は雛たちを安心させるため話を続ける。
「はんぺんさん、ラン卵さん。お母さんはもうじき戻ってきますから大丈夫ですよ……」
　ちぎりも隣に来て嬉しそうに話を聞いている。
　持参した大根の葉や米などあげて、優しく羽を撫でながら日常の話をする。
「何か困ったことはないですか？　そうですか、なかなか卵が孵らなかったのですね……でも元気そうでよかったです」
　雛たちも落ち着きを取り戻したようだ。

　荒太郎と空音が玄関に着くと、そこへ八神修が現れた。
　リードをつけた黒い子猫、ブラックを連れている。
　修は、荒太郎に話しかけた。
「雛の誕生おめでとう。和風ポトフの屋外パーティーをするんだって？」
「和風ポトフ？　えーと、おでんのことかなー？」
　戸惑う荒太郎に、修は持参したパックを渡す。
「うちのシェフからだ。下煮した牛スジとバクダンに生ウドンが入っている」
「うわあ、ありがとう！」
「ところで、慌ててるようだがどうかしたのか？　雛を見せてもらおうと思ったんだが……」
「それが、実は……」
　簡単に事情を話す荒太郎。
「なら、俺も一緒に行こう」
　修も瓢の部屋に向かうことになった。

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